たぶん思ったことあんまりまちがってない

ジャズ アルバム紹介やライブの感想など 

Codona / Codona 3

論文・研究発表の締め切り地獄からひとまず解放されたので、久々にブログ更新(週2回くらいのペースで更新したいんですが忙しいとなかなか…)。

この1ヵ月くらいまともに音楽を聴けていなかった反動で、昨日は1日ジャズ漬けの幸せな時間を過ごしました。午前中に買い置いていた佐藤允彦作品(Joeさんにオススメしてもらったやつ)をまとめて聴き、午後は行きつけのジャズ喫茶Jazz Nuttyに。Nuttyは毎月「今月のテーマ」を決めていて、この2月は「トロンボーン特集」とのことだったので、家からSamuel Blaser『Solo Bone』を持ち込み、「Mood Indigo」(名演!)などをかけてもらいました。続けてマスターが管楽器無伴奏ソロつながりということでかけてくれたHamiet Bluiett『Birthright』に大いに感動しつつ、夜は入谷なってるハウス林栄一ガトスミーティングのライブ。いやー、最高の1日。

今日取り上げるのは、そんな幸せな日の帰りの電車で聴いて感銘を受けたアルバムです。

 

 

Codona 3

Codona 3

 

Collin Walcott — sitar, tabla, hammered dulcimer, sanza, voice

Don Cherry — trumpet, organ, doussn' gouni, voice

Naná Vasconcelos — percussion, berimbau, voice

 

 

ユニオンでドン・チェリーの名前を見て「安い」という理由のみで購入していたもの。ライブを観に行った日の帰りは音楽を聴かないことが多いんですが、「これならへヴィーじゃなさそう」と思って何気なく聴いてみました。最初にぼーっと数曲聴き流したときは、「ああ、この手のECM流エセ民族音楽か。まあ悪くないけど…」程度の感想。ECMによくあるキレイに整いすぎてるものってあんまり好みではないんですよね。エセ民族音楽なら胡散臭いやつとか適当なやつの方が好きで。

 


Pharoah Sanders Going to Africa

たとえばこういうの。これはもはや「エセ」ですらないかもしれませんが、(良い意味で)アホで楽しくて最高。

 

そんなわけで、本作を聴いて「ドン・チェリーと言えどもECMからリリースするものには"漂白感"が付いちゃうんだなー」とか思ってたんですが、謎のボイスを重ねる5曲目「Trayara Boia」あたりから「あれ、様子がおかしいぞ?」となり、最後の曲「Inner Organs」を聴いてビックリ。9分ちょっとの曲で、ずっとオルガンの持続音が鳴っている上に、途中からタブラも入りつつ、ボイスやらトランペットやらを重ねていく趣向なんですが、終電の中でiPodで聴いていたら軽くトリップしかけました。うわーやばいやばいやばいと思って、音量を上げてリピート。

 


Codona 3 - Inner Organs

 

「内臓」と「オルガン」をかけてるってことですかね。やってることはシンプルですがカッコイイ。正直他の曲はそこまででもないのですが、これだけ妙にツボにハマってしまいました。

このCodonaというグループ、気になって少し検索してみたら、Wikipedia「free jazz and world fusion group」とありました。いわゆる「フリージャズ」の要素はほとんどないような気がしますが、確かにこれは「ワールド・ミュージック」ではなく「ワールド・フュージョン」。色々ごちゃ混ぜにした結果、見事にヘンなものが生まれてますね。ECMから計3枚出しているようで、本作の他にも2枚あるとのことなので、ちょっと聴いてみたいと思ってます。

 

 

Codona Trilogy (Spkg)

Codona Trilogy (Spkg)

 

2009年に本作を含む3枚をまとめてリイシューしたもののようです。事前に知ってたらこの3枚セットの方を買いたかったんですが…。

 

川下直広&山崎弘一 / I Guess Everything Reminds You of Something

死ぬほど忙しくて当ブログも全然更新できずにいますが、最近買った旧譜で思いっきり好みのものに出会ったので簡単にご紹介しておきます。

 

 

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フェダインで知られるサックス奏者川下直広さんと、所謂「中央線ジャズ」のベテランベーシスト山崎弘一さんのデュオ作を聴きました。1997年録音。収録曲は以下の通り。

 

1. Africa #1
2. Yesterday
3. Pharaoh
4. Blue Moon
5. Besame Mucho
6. Alone Together
7. Africa #2
8. Come Sunday
9. Too Young
10. Now's The Time 

 

<参考動画>


「THAT'S ALL」山崎弘一 川下直広

 

文句なしの傑作。「Besame Mucho」なんかめちゃくちゃシンプルに、ストレートにやってますが、この2人にしか出せない"味"が濃厚で最高です。フェダインのような暑苦しくハードな演奏ではないけれど、ある種の泥臭さのようなものは共通していて。川下さんのサックスはアルバート・アイラーローランド・カークファラオ・サンダースの影響を強く感じさせるもので、息遣いやビブラートが強烈に生々しくてたまらんのですよ。山崎さんのぶっといベースも相性バッチリです。

選曲も良い。「Come Sunday」なんてこのデュオのスタイルに完璧にハマってます。個人的にアーチー・シェップホーレス・パーランのデュオとか、アイラーの『Goin' Home』みたいな「フリー系サックス奏者の黒人霊歌集」には目がないんですが、本作もそれに通じるものがありますね。無伴奏テナーの「Too Young」も沁みるなあ…。

 

本作は地底レコードからリリースされていますが、現在は廃盤になっているようです。実にもったいない。中央線界隈のジャズがお好きな方は、中古店等で見かけたらぜひ。ちなみに、私は行けませんが今月27日(水)に入谷のなってるハウスでこのデュオのライブがあるようです。川下さんの演奏は去年のフェダイン(一夜限りの?)再結成以来観に行けていないので久々に行きたいんですけど、論文の締め切りがががが…。

 

 

dCprG / Franz Kafka's South Amerika

この年末年始、色んな方の年間ベストをチェックしてました。ど腐れジャズファンの自分が大いに共感したのは、いつも拝読しているJoeさんのものはもちろん、Free Jazz Collectiveの「Albums of the Year 2015」、アメリカのラジオ局NPRの批評家投票など。で、各所で挙がっていたもので「気になっていたけど買い漏らしていたやつ」をいくつか買ったのですが、そんな中の1枚がこれ。

 

 

フランツ・カフカのサウスアメリカ

フランツ・カフカのサウスアメリカ

 

菊地成孔 坪口昌恭(Keys)小田朋美(Keys. Cho)大村孝佳(Gt.)アリガス(Bass)千住宗臣(Drums)田中教順(Drums)大儀見元(Per. Cho)津上研太(Sax)高井汐人(Sax)類家心平(Trumpet)

 

 

菊地成孔さんのdCprGの最新作。旧デートコースの頃、『アイアンマウンテン報告』『構造と力』なんかは割とよく聴いてたんですが、2010年の活動再開以後は興味を失ってました。インパルスからリリースされた前作、ラジオやyoutubeで聴いてもいまいちピンと来なかったんですよね。ところが、本作がyoroszさんの年間ベスト(異常なクオリティとクオンティティ!)に入っていたのを見て、「久々に聴いてみようかな」と思って購入。
合間合間に挟まれるポエトリーリーディング的なやつには全然ノれなかったんですが、それを除けばなかなか良い感じです。昔は「あれこれ言われるほどマイルスマイルスしてないのでは?」と思ってましたが、本作には『Get Up with It』『On the Corner』を連想させられる部分もあり。オルガン「ビャー!」でブレイクするのとか気持ち良いです。

 

 

多国籍・無国籍感も増し、ますますワケが分からん音楽になってますが、キャッチーさというかエンタメ性を失わないあたりはさすが。実は新宿ピットインの年越しライブで鈴木勲セッション(スガダイロー坂田明中村達也!)に菊地さんが飛び入りするという嬉しいハプニング(50周年記念コンサートのステージ上でオマさんが菊地さんに「今度一緒にやろう」と声をかけるという伏線あり)があったんですが、そこでも菊地さんのエンターテナーっぷりには舌を巻きました。豪腕揃いのセッションで、坂田さんが「ロンリーウーマン」を吹き始めたと思ったらゴリゴリのフリーに雪崩れ込んだりして脳汁出まくりだったんですが、そんな中で菊地さんがシレっとビートルズの「エリナー・リグビー」のフレーズ(たぶん)を吹き始めた時は思わず仰け反りました。最近サックス、特にテナーを吹く機会が減ってるのは本当に惜しい。サックスのインプロヴァイザーとしてめちゃくちゃすごい人だと思ってるんですが…。 

 

 

やや脱線しましたが、今のdCprG、ライブで観たらめちゃくちゃ楽しいでしょうね。スタンディングのライブは苦手だし、まず観に行くことはないだろうと思ってましたが、死ぬまでに1回くらいは行っておいた方が良いような気がしてきてます。

 

 

2015年ベスト

今年も1年を締めくくる儀式として、年間ベストをまとめておきたいと思います。ルールは1つだけ、「リーダー被りなし」。他は特に縛りもなく、順位も決めません。「今年はこれよく聴いたな」と思ったものを適当にあげます。アルバム名のところに試聴用の音源・動画等のリンクを貼りますので、興味をひかれた方はぜひ(ちょうど良い音源を見つけられなかったのもありますが…)。

 

 

①Jack Dejohnnette / Made in Chicago

Made in Chicago

Made in Chicago

 

 2015年は、AACM50周年という記念すべき年でした。そんな中、「AACMは死んでない!」ということをハッキリ示してくれた老人たちに心からの拍手を。このアルバムのロスコー・ミッチェル、最高です。

 

 

②Matana Roberts / Coin Coin Chapter Three: River  Run Thee

Coin Coin Chapter Three: River

Coin Coin Chapter Three: River

 

当ブログがプッシュし続けているMatana Roberts、2015年もやってくれました。全12章を予定しているCoin Coinプロジェクト、毎回スタイルを変え、聴き手を驚かせてくれます。今のところ2章が1番好きというのは変わらないのですが、これもなかなかにとんでもない作品で、余裕の年間ベスト入りです。

 

 

③小埜涼子 / Alternate Flash Heads

Alternate Flash Heads

Alternate Flash Heads

 

ブログでは取り上げそびれましたが、今年も小埜涼子さんの演奏・作品はよく聴きました。キレッキレのアルトに爆音ドラム、全99曲で30分たらずという凄まじい作品。ランダム再生で毎回表情を変えるというアイディアも面白いんですが、小埜さんの作品はどれもコンセプト先行にならないのが素晴らしいです。林栄一さんとの『Beyond the Dual 2』も良かった。

 

 

④吉田野乃子 / Lotus

こちらも小埜さんと同じく、フレッシュで強烈なアイディアとそれを具体化する高い演奏技術に感服。文句なしの傑作です。そういえば今年は女性サックス奏者の活躍が印象深かったですね(纐纈雅代さん、Ingrid Laubrockの新作も良かった)。

 

 

⑤blacksheep / + -Beast-

+ -Beast-

+ -Beast-

 

吉田つながりで、吉田隆一さんのblacksheep。2年前にも3rdを年間ベストに選んでますが、これもやっぱり素晴らしかった。ジャケや同梱のブックレットのクオリティも半端ない。blacksheepはリリースを重ねるごとにアルバム毎のコンセプトが明確に打ち出されるようになってきている気がします。今後の展開にも大いに期待してます。

 

 

⑥Matthew Shipp / To Duke

To Duke

To Duke

 

 管楽器の入っていないものはあまり聴かないのですが、これは久々にピアノトリオで「やられた!」と思う作品でした。エリントン・トリビュート作って掃いて捨てるほどあるわけですが、エリントンへのリスペクトを示しつつ自分の音楽をきちんと提示できているものに出会うとうれしくなりますね。エリントン・ファンに全力でオススメします。

 

 

⑦Chris Pitsiokos / Gordian Twine

Gordian Twine

Gordian Twine

 

今年はこの人の印象が鮮烈でした。90年生まれなのでまだ若いですが、とんでもない才能の持ち主。切れ味鋭いアルトが魅力で、今年聴いた彼の作品はどれも面白かったのですが、とりあえず1枚選ぶならこれかな。「フリージャズ」にまだフレッシュさを持ち込むことが可能だと言うことを示してくれました。

 

 

⑧Jim O'rourke  / Simple Songs

Simple Songs

Simple Songs

 

ピッツィオコスのアルバムをディスクユニオンの通販で買うとき、送料を無料にするための帳尻あわせで買った(5000円以上買うと送料無料)んですが、いやはや傑作でした。丁寧に作り込まれているのにシンプルで、これまでのジムさんの作品にはちょっと珍しいタイプの盛り上がりもあったり(「Hotel Blue」の高揚感!)。「何か歌ものでも聴こうかな」って気分になった時にまず手が伸びる作品でした。草月ホールの2Daysに行けなかったことが本当に悔やまれます。

 

 

⑨Virginia Gentaほか / Det Kritiske Punkt

Det Kritiske Punkt [12 inch Analog]

Det Kritiske Punkt [12 inch Analog]

 

長らく入手できていなかったVirginia Gentaのアナログ盤が手元にあるってだけでうれしいです。 ゴリゴリでバッキバキのフリージャズ/ノイズ。鈍重になっていないのがポイント高くて、私にはある種のヒーリングミュージックとして機能します。Chris Corsanoとのデュオのライブ盤が欲しいんですが、CorsanoのHPを見ると「Sold Out」になってるんですよね。デジタルで良いから再販して欲しい…。

 

 

⑩Daniel Zamir / Redemption Songs 

Redemption Songs

Redemption Songs

 

2015年、新譜・旧譜を問わず回数的にもっとも聴いた作品は、Daniel Zamirの『One』でした。前から存在は知っていて気になってたんですが、1枚も聴いたことなかったんですよね。彼の来日ライブの情報が流れた頃、id:joefreeさんとid:yoroszさんのブログ記事に背中を押されて『One』を購入。いやー、これはめっちゃくちゃ聴きました。それはもう延々と繰り返されるザミールのフレーズくらいしつこく聴きました。シンプルで美しいメロディと、どこまでも高く高く飛翔するようなソプラノが尋常じゃない中毒性で、脱法ドラッグならぬ「完全合法ドラッグ」ですね、これは。

で、当然他の作品も聴きたくなり、とりあえず新譜と旧譜をあわせて6枚買いました。Joeさんが記事を書かれていて、私もほとんど同じ感想しか浮かばなかったので自分のブログでは取り上げませんでしたが、新譜の中ではこの『Redemption Songs』が一番気に入りました。来日ライブはダウトミュージック10周年記念祭りと被ってたので行かなかったんですが、いつか生で観たいですね。

 

 

<総評>

昨年、一昨年と年間ベストは5枚に絞っていて、今年もそうしようと思っていたんですが、「これは外せない!」というのが結構あって、結果的に10枚になっちゃいました。挙げなかったものでは、Mary Halvorsonの諸作も良かったし、Ken VandermarkMars Williamsらシカゴ勢にも相変わらず魅了されっぱなしでした。内橋和久+広瀬淳二『saxophonedaxophone 』等、10周年を迎えたダウトミュージックの諸作も印象深かったです。

それと、今年は例年よりもいわゆる「コンテンポラリージャズ」を多く聴きました。自分では関心の埒外に置いていたJohn EscreetDavid Binneyをyoroszさんの勧めで聴いところ、これがなかなか良くて。そこそこジャズを聴くようになってから、「自分の好みはこういうやつ」というのが分かってきて、興味の幅が狭まってしまっていたなと反省しました。「聴いてみたらやっぱり自分の好みじゃなかった」というのはあって当然ですが、余計な先入観で入口を閉ざしてしまってはいかんなと。

各所の年間ベストでやたら取り上げられているKamasi Washington『The Epic』なんかもちゃんと購入して聴きました(話題作は一応チェックするんですが、youtubesoundcloudの試聴で満足してしまうことも多くて…)。カマシに関しては、「絶対マジメで良い人(アーサー・ブライス好きに悪い人はいません)だが、The Epicというアルバム単位では突出したところが少なく物足りない」というのが今のところの私の評価です。

その他の話題作では、Tigran Hamasyan『Mockroot』が意外と面白かったです。「メタルとかプログレ好きに人気ありそう」と思って「ティグラン・ハマシアン メタル」でググってみたらスウェーデンのバンドMeshuggahの名前が出てきて、「ああ、なるほど」と(同じくMeshuggahに強い影響を受けた日本のバンド、kamomekamomeの2ndを引っ張り出してきて懐かしい気分に浸ったりしちゃいました)。カマシが良くも悪くもまっとうに「ジャズ」をやっていたのに対し、ティグランはジャズ、メタル、民族音楽等を等価に扱ってごちゃ混ぜにした感じ。ジャズって古くから様々な音楽を取り込んできたわけですが、その多くはジャズ畑の人が他ジャンルの音楽をジャズの話法(たとえば"スウィング"。強烈にスウィングするエリントンの「くるみ割り人形」を参照)で消化するものだったのではないでしょうか。その意味で、”ジャズ目線”で見るとティグランは新世代感ありますが、本人に「ジャズミュージシャン」という意識がないのであれば、彼の音楽をジャズと括る必要はないし、括らない方が多くの人に届くような気がします。

 

…無駄に総評が長くなってしまいました。今年は新譜も旧譜も聴くのが追い付かないくらい面白いものがたくさん入手できてうれしい限りです。ほとんど備忘録として書いているこのブログに足を運んでくださったすべての方、とりわけ直接お会いしてお話ししてくださったyoroszさん、吉田隆一さんに心から感謝します。また、めでたくブログ10周年を迎えられたJoeさんにも特別な感謝を。いつも的確で、刺激的で、それでいて冗長にならないレビュー、最高です。

さて、そろそろシャワーを浴びて毎年恒例新宿ピットインの年越しライブに向かいます。宇宙一好きなバンド、渋谷毅オーケストラを聴かないと1年締めくくれませんから。このブログ、来年も細々と続けていくつもりですので、またお付き合いいただければ幸いです。

 

 


Eric Dolphy At The Five Spot - God Bless The Child

2016年もみなさんに祝福がありますように。

 

 

2015年12月26日新宿PIT INN 50周年記念 新宿ジャズフェスティバル(1日目)

祝!50周年!

 

 

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我が最愛のジャズクラブ、新宿PIT INNの 50周年記念フェスに行ってきました。思えば、私が初めて生で本格的なジャズの演奏を観た場所もピットインでした(確か南博さんのGo There!だったはず)。今も月数回くらいは通っていますし、色んな意味で非常に思い入れの深い場所です。そのピットインの50周年を祝うフェス、なんと山下洋輔トリオのリユニオンをやるということで、なんとか都合をつけて参加してきました。

会場である新宿文化センターの大ホールは定員約1800名。普段のピットインのキャパはたぶん100ちょっとです。以前ジャズ非常階段を観た時、立ち見込みでギュウギュウに客が入ってたんですが、あの時で150~160人くらいだったはず。なので、1800人のホールがほんとに埋まるのかなと思ってたんですが、少なくとも1階席は満席でした(2階席は未確認)。ピットインのファンがそんなにいたことにビックリ。さらに、ピットインの1月のスケジュール表の表紙がblacksheepのアニメ絵で、しかもラノベ風の題字が付いていて、またビックリ。さらにさらに、プログラムと一緒に入っていたフライヤーでドン・モイエの来日(しかも生活向上委員会大管弦楽団の公演!)を知って驚愕。思わず「うおっ!」とか声を出してしましました。

 

そんなこんなでビックリしているうちに、菊地成孔さんの司会でフェスが幕を開けました。本来は亡くなった評論家の相倉久人さんが司会を務めるはずだったとのことで、フェス冒頭では相倉さん(と長年ピットインのPAをされていた藤村保夫さん)のために30秒間の黙祷が捧げられました。菊地さんらしいと言えばらしいんですが、あれはやや演出過剰だったかな。しかし、その後の菊地さんの司会っぷりは流石でした。各バンドのセットチェンジの間をピットインのオーナーとのトークや昔の写真のスライド上映等で繋ぎつつ、出演者ほぼ全員についてちゃんと紹介文を用意していて、お祭りをきっちり盛り上げていました。お見事。

 

当日出演したのは全部で7組。セットチェンジの間などに感想を軽くメモっていましたので、その一部を紹介しようと思います。

 

 

①松木恒秀グループ
松木恒秀(G), 野力奏一(Key,P), グレッグ・リー(B), 村上“ポンタ”秀一(Ds), 本多俊之(Sax), 和田アキラ(G)

オールドスタイルというか、非常にコンサバティブなフュージョン/クロスオーバーって感じ。30年前の録音と言われて聴かされたら信じちゃいそうです。異常にダサく聴こえたのは、音色の選択、特にキーボードの音色のせいなのかな。ある種の様式美なんでしょうが、個人的にはかなり苦手な音楽でした。本多俊之さんのカーブドソプラノのソロなんかは結構かっこよかったんですけどね…。

 

 

②ドリーム・セッション・パート1

鬼怒無月(G), 勝井祐二(Vn), 近藤等則(Electric Tp), 今堀恒雄(G), ナスノミツル(B), 中村達也(Ds)

こちらはゴリゴリのパワー系セッションで、まあ大好物ですよ。空間を鋭く切り裂きつつグイグイと押し広げていくような近藤等則さんの電化トランペットがクソカッコイイ。大ホールでも手を緩めることなく、破壊的・殺人的な音も繰り出していて感動しました。

 

 

大友良英スペシャル・ビックバンド
大友良英(G), 江藤直子(Pf), 近藤達郎(Key), 斉藤寛(Fl), 井上梨江(Cl), 鈴木広志(Sax), 江川良子(Sax), 東凉太(Sax), 佐藤秀徳(Tp), 今込治(Tb), 木村仁哉(Tuba), 大口俊輔(Acc), かわいしのぶ(B), 小林武文(Ds), 上原なな江(Per), 相川瞳(Per), Sachiko M(Sinewaves), ゲスト:太田惠資(Vn), 梅津和時(Sax)

新譜が出たばかりの大友さんのビックバンド。やったのはどれも新譜収録の曲で、少し短めにやってたかな。買ったばかりの新譜を聴いた時、管のソロが少ないのが物足りないかなと思ってたんですが、梅津和時さんのゲスト参加が良い感じでした。ラストの「ラジオのように」からあまちゃんのテーマ」に繋ぐメドレーも楽しくて良かったですが、エリック・ドルフィー「Stright Up and Down」渋さ知らズのダンドリ、あるいはブッチ・モリスのコンダクションみたいに、大友さんがその場で指示を出しながらやっていたのが面白かったです。

 

≪参考:ブッチ・モリスのコンダクション≫

これ生で観たら楽しいでしょうねー。

 

 

菊地成孔ダブ・セプテット
菊地成孔(Sax), 類家心平(Tp), 駒野逸美(Tb), 坪口“TZBO”昌恭(Pf), 鈴木正人(B), 本田珠也(Ds), パードン木村(Real time dub effects)

ここで司会の菊地さんのバンドが登場。ジョージ・ラッセル「The Lydiot」とかやってました。この日の出演バンドの中では、一番いわゆる"ジャズ"っぽい演奏だったかな。しかしこのバンド、音盤で聴いても生で観ても、ダブエンジニアの存在がイマイチ効果的に感じられないんですよね。かといって、ダブがなかったらただのバップだし…。類家心平さんのソロは素晴らしかったです。

 

 

佐藤允彦ソロ・ピアノ
佐藤允彦(Pf)

演奏内容的には、このプログラムがダントツで良かったと思います。最初に短く挨拶をして、その後20分間だけソロピアノをやったのですが、 いやはや凄まじい演奏でした。MCで「冒頭だけ作曲してある」というようなことをおっしゃっていましたが、大部分は即興演奏。そこで紡がれる音のすべてに必然性と確信があるように聴こえました。初めてジャズ喫茶でセシル・テイラー『Indent』を聴いた時に匹敵する衝撃と感動がありました。

 

≪参考:セシル・テイラー『Indent』≫


Cecil Taylor, Solo Piano, INDENT part 1 of 2

 

 

⑥鈴木勲スペシャル・セッション
鈴木勲(B), 板橋文夫(Pf), 井野信義(B), 本田珠也(Ds), ゲスト:ジョージ大塚(Ds), 渡辺香津美(G)

いつものオマさん。80代とは思えないスピード感で紫式部などをブリブリと弾いてました。相変わらずカッコイイ。演奏後半は渡辺香津美さん、ジョージ大塚さんとトリオで「Yesterday」。ジャズスタンダードではなく、ビートルズの方ですね。じっくり聴かせる良い演奏でした。

 

 

山下洋輔トリオ・リユニオン
山下洋輔(Pf), 中村誠一(Sax), 坂田明(Sax), 林栄一(Sax), 森山威男(Ds), 小山彰太(Ds)

これですよこれ、これを観たくて年末のクソ忙しい時に7000円も払って新宿文化センターまで行ったんです。演奏が始まる前にコルトレーン来日公演時の相倉久人さんの司会の音声が流され、菊地さんがその紹介文をもじって呼び込んだんですが、最初に出てきたのが中村誠一さん、森山威男さんの第1期山下トリオ。演奏したのは「ミナのセカンドテーマ」!続いて坂田明さん、森山さんの第2期トリオで「キアズマ」!さらに坂田さん、小山彰太さんの第3期トリオで「ゴースト」!さらにさらに、林栄一さん、小山さんと「ストロベリー・チューン」!最後は全員登場で「グガン」!もうこれは内容がどうこうではなく、山下トリオのファンサービスてんこ盛り、トッピング全部乗せみたいな演奏(もちろん、内容的にも「ストロベリー・チューン」での林さんの無伴奏ソロとか素晴らしかったんですが)。祭りの最後を締めくくるに相応しく、客席も大盛り上がりでした。

 


Yosuke Yamashita Trio - Ghost

初めて山下トリオの音楽にハマったのがこの『モントルーアフターグロウ』でした。目の前でこの演奏が再現された時(坂田さんの絶叫もありました)、興奮と感動で思わず涙が…。

 

 

大きなホールでのコンサートですし、直前にチケットを買ったために良い席が残っていなかったこともあって音響的にはかなりイマイチだったんですが、とても楽しいお祭りでした。20年以上西武新宿線沿線に住んでいたり、高校時代に寺山修司から新宿アングラ文化に憧れを持ったことがあったり、ユニオンを始めとするレコード店や書店や映画館に散々お金を落としていたり、その他色んな理由で新宿という街には特別な思いがあるんですが、その中でもピットインというのは特別な場所です。これからも可能な限り通い続けるでしょうし、「ジャズの殿堂」としてのピットインがますます発展・進化していくことに期待しています。

しかし、満席だとしたら1800人、少なくとも1000人以上はいたであろうお客さんのどれだけが日常的にライブに足を運んでるんだろうとも思ってしまいました(ちなみに、司会の菊地さんが「○○代の人拍手!」とお客さんに拍手をさせて年齢調査?をした場面があったんですが、50代以上がかなり多かったです)。吉祥寺foxholeのように閉じてしまったお店もありますが、今の東京はライブハウスが多すぎるくらいに多くて、私の行動範囲だけでも西荻窪アケタの店荻窪ベルベットサン、入谷なってるハウス、西麻布スーパーデラックス、関内エアジン、早稲田茶箱、稲毛キャンディ、国立ノートランクスなどなどで日々素晴らしい演奏を観ることができます。でも、集客が演奏内容の素晴らしさに見合ってなくてもったいないと思うことが本当に多いんですよね。ホールよりはるかに良い音で聴けますので、特に首都圏在住の方にはライブ会場に足を運ぶことをおススメします。

最後ちょっとグチっぽくなっちゃいましたが、とにかくピットイン50周年おめでとうございます!!ピットイン関係者の皆さん、ほんと感謝してます。直近では12月31日の毎年恒例年越しライブも予約済みですし、末永くお世話になりたいと思っていますので、今後とももよろしくお願いします!!

 

 

 

新宿ピットインの50年

新宿ピットインの50年

 

50周年記念本、会場の物販で購入しました。ピットインオーナーによる出演ミュージシャンへのインタビュー(『季刊・アナログ』という雑誌に連載されていたもののようです)、毎月のスケジュール表に載っているミュージシャンのエッセイ、 渡辺貞夫×坂田明etc.の対談などが収録されていて、充実の内容。インタビュー以外は大体目を通しましたが、めちゃくちゃ面白いです。

 

 

大友良英SPECIAL BIG BAND LIVE AT SHINJUKU PIT INN 新宿ピットイン50周年記念

大友良英SPECIAL BIG BAND LIVE AT SHINJUKU PIT INN 新宿ピットイン50周年記念

 

ピットインのレーベルから出た、50周年記念のライブアルバム。ドルフィーの曲を3曲やっていて、その中でも「Gazzelloni」がカッコイイ。

 

 

日本フリージャズ史

日本フリージャズ史

 

このフェスでの大友良英スペシャルビッグバンドの1曲目「Song for Che ~ Reducing Agent」は、本書の著者である副島輝人さんに捧げられました。日本フリージャズファンには必読のドキュメント、伝説、神話の数々。

 

 

 

10年前のStudio Voice発掘

十年ひと昔。

 

 

 

 

我が家(実家)の物置き部屋を整理していたら、雑誌Studio Voiceの2005年5月号が出てきました。特集は「ポスト・ジャズのサウンドテクスチュア」で、表紙は菊地成孔さん。2005年というと、菊地・大谷コンビの『東大アイラー』が出た年であり、情熱大陸やら水曜WANTED!(ラジオ番組)やらで菊地さんの各方面への露出が増えていた時期ですね。この雑誌でも、菊地さんは4ページにわたって大々的に取り上げられています。他には、大友良英さんや不破大輔さんのインタヴューがあったり、故・副島輝人さんとECDさんの対談が載っていたり。
ここに提示されているのは、Studio Voiceという雑誌が10年前に「ジャズの最先端」と考えていたもののようです。それを10年経った今読んで、興味深いと思ったところを少しだけ紹介してみようかなと。

 

 

<目次(ジャズ特集部分のみ抜粋)>

 

・ジャズその他(平岡正明湯浅学
菊地成孔インタヴュー(南部真里)
・みっつの主題からみる菊地成孔東琢磨/北尾修一/岸野雄一
・菊地によるジャズ10枚のプレゼンテーション(聞き手=三田格
大友良英インタヴュー(牧野琢磨
大友良英から考えるジャズとサントラの関係(今村健一)
渋さ知らズ一斉アンケート ジャズってなんですか?
不破大輔インタヴュー(湯浅学

 

私の考えるジャズ

・即興第一世代(竹田賢一)
フュージョンは越境していたか(若杉実)
梅津和時とNYジャズ(塚本実)
・日本のジャズ重要盤50(土佐有明/南部真里/沼田順/湯浅学/吉本秀純)
小西康陽とジャズ(北沢夏音
・クラブジャズのコア(春日正信)
・ジャズ・ノット・ジャズ:90-00S(原雅明

 

ニュー・ジャズ・ギルド

大谷能生インタヴュー(沼田順)

・秋山徹次インタヴュー(南部真里)
・simインタヴュー(土佐有明
・西海岸ジャズと日本の関係(山口元輝)
・即興の現場(伊東篤宏、談:鈴木美幸、脇谷浩昭)
・対談:副島輝人×ECD
・ジャパニーズジャズ・マップ
・ハコ聴きのジャズ(湯浅学
・ブッチ・モリスとコンダクションの20年(恩田晃)
・ジャズ・プレイリスト 大友良英南博/中村としまる/秋山徹次/渡邊琢磨/片山広明/梅津和時/恩田晃/Shing02藤原大輔大谷能生不破大輔
・アンケート ケリー・チェルコ/Dill/伊藤匠/関根靖/大蔵雅彦/ミドリモトヒデ

 


こうして目次を並べてみるとかなり面白そうなんですが、実際に読んでみると色々消化不良な感じでした。校正がガバガバで誤字・脱字だらけだったり、段組みや文字の背景色のせいで恐ろしく読みにくかったりといった内容以前の問題もあるんですが、何よりも1つひとつのインタヴューやコラムの字数が少なすぎるのがもったいない。日本のものに偏っているとはいえ、相当幅広く取り上げているんですが(Improvised Music from JapanStudio Weeまで!)、どれも字数が少なすぎていまいち踏み込めていないんですよね。JTNCのような明確な編集方針もうかがえず、とりあえず色々ぶち込んでみたんだなという印象。

こんな具合に無責任なケチをつけるのは簡単なわけですが、面白いと思ったところもありまして。

 


大友良英インタヴュー

大友「これでも僕は非常にメロディ型の人間なんですよ。で、すごく極端なことを言えば、フィラメントでやっていることとかノイズとかを自分の中で左端に置いたとしたら、反対側に昭和歌謡のようなメロディがあって、その間がすっぽり抜け落ちてるようなとこありますね。メロディはその人の生い立ちや記憶に起因するものだと思うんだけど、そんな手垢のこびりついたものと、機械がカタカタ鳴ってるだけの音を面白いと思う感覚とが僕の中では混在していて。その両方にヒエラルキーが与えない原文ママ音楽が作れないかなと思ってるんです。」

 

当時、大友さんがレコード大賞を獲ったり、紅白に出場したりするとは誰も思ってなかったでしょうね。しかし、この10年で大友さんがやっていることを見ると、このコメントには「なるほどなあ」と思う部分が。

 

see you in a dream~大友良英 produces さがゆき sings~

see you in a dream~大友良英 produces さがゆき sings~

 

そういえばこれも2005年リリースだったんですね。大友さんプロデュースの中村八大集。良企画。おすすめです。

 

 


②副島輝人×ECD

副島「ジャズは変化するからジャズなんです。世の中がどれほど変わろうが、ジャズのDNAは残っていくんです。即興とリズムと肉体。これだけはなにが起こっても消滅することはない。

 

副島さんのジャズ観がぎゅっと凝縮されたフレーズ。この雑誌の中で、大友さんが「ジャズ」というククリの中に色んなものをぶち込んでしまうことの意味のなさ、「何がジャズか」なんて結局個人的な思い込みに過ぎないこと等を語っていて、私もそれは正しいだろうと思っています。ただ、私は副島さんがその生涯を通して論評し、紹介し、オーガナイズし、愛し続けたような「ジャズ」が好きだし、その可能性をある種ロマンティックなまでに信奉しています。

 


渋さ知らズ「本多工務店のテーマ」Live in Zürich 1998

2分半頃から、踊り狂う副島さん。晩年もピットインの客席でちょくちょくお見掛けしました。

 


③アーティスト・プレイリスト120
12人のミュージシャンが「ジャズ」を10枚ずつ選ぶという企画。

片山広明さんや梅津和時さんのチョイスは納得が行き過ぎるくらい納得の行くもので、AEOC『Message to Our Folks』『Nice Guy』、ICPオーケストラ『Bospaadje Konijnehol I』、コルトレーン『Live at The Village Vanguard Again』、オーネット『This is Our Music』などが並んでいるのを見るとうれしくなってしまいます。
そうかと思えば、Shing02さんがアート・ブレイキー『Free for All』のようなハードバップの名盤の中にハン・ベニンクのソロを混ぜていたり、秋山徹次さんがシドニー・ベシェルイ・アームストロングと一緒にジェームス・ジトロを選んでいたり、ちょっと意外なものも。
企画自体はベタといえばベタですが、色んな意味で面白かったです。

 

 


Art Blakey & The Jazz Messengers - Free For All

普段フリージャズがどうのこうのということばかり書いていますが、実はジャズ・メッセンジャーズも結構好きで。ウェイン・ショーターがいた頃の作品は愛聴盤がいくつかあります。

 


この10年前の特集を読んでみて、思ったほど「時代を感じるなー」というものはなかったですね。強いてあげるなら、クラブジャズのところで「とりあえずバヤカは聴いたほうがいい。彼らはジャズの未来への鍵を握っている」とか書かれているところと、デヴィッド・ヴォイスにそこそこのスペースが与えられていることくらいかな。

雑誌に関しては、経済的・物理的体力の問題があって収集してないんですが、こうしてたまに古いものを読んでみると面白いですね。中古レコードのライナーノートを見ても、「当時はこの人こんな扱いだったのか」とか思うことありますし(なんだったかロフトジャズ系のレコードのライナーノートで、リッチー・コールが「これからの時代を担っていくプレーヤー」みたいに紹介されていたのを見た記憶が)、古本屋やジャズ喫茶で昔のジャズ批評なんかを読むと色んな発見があったりして。

私はちょうど2005年頃に初めてジャズに触れ、大学に入学した2007年あたりから本格的にCD等を集めるようになったので、それ以前のことは本やネット等で得た知識しかないわけです。もはや雑誌というメディアは旧時代の遺物になりつつあるとはいえ、後から振り返ってみるためにも、その時代時代の空気の一部を切り取ったものが残っていくというのは重要なことだなと思っています(SNSの方が情報発信も交流も容易なのにブログという形式に拘っているのは、過去記事を検索・閲覧しやすいという理由だったりします)。

今流行りの(?)『Jazz The New Chapter(JTNC)』も、何だかんだ全巻買っているのですが、10年後、20年後に読み返したら面白いと思うんですよね。物の管理が上手い方ではないんですが、きちんと取っておこうと思っています。

 

 

Virginia Genta, Dag Stiberg, Jon Wesseltoft, David Vanzan / DET KRITISKE PUNKT

前回更新から大分間が空いてしまいましたが、なんとか生きています。

 

 

Det Kritiske Punkt [12 inch Analog]

Det Kritiske Punkt [12 inch Analog]

 

Virginia Genta(Ts, Melodica, Wood Flute), Dag Stiberg(As, Khaen), Jon Wesseltoft(Gt, Electronics), David Vanzan(Dr, Per)

 

 

いくつか大事な締め切りを抱えていまして、ここしばらくはクッソ忙しく、ブログを更新する余裕がありませんでした。四谷いーぐるでのblacksheep『+ -Beast-』試聴会に行って吉田隆一さんと少しカマシ・ワシントンの話をしたこととか、The Thing with 今井和雄、坂田明がめちゃくそかっこよかったこととか、記事化しようと思ってたことはいくつかあったんですけどね…。まだまだ2月までは忙しい日々が続くのですが、とりあえず今回取り上げる作品だけは今年中に紹介しておきたいと思いまして。

 

イタリアのVirginia GentaDavid VanzanノルウェーDag StibergJon Wesseltoftの4人(全員正確な発音がわからない 笑)によるパワー系ゴリゴリのフリージャズ/ノイズです。基本的に嵐のような轟音がずっと続くんですが、鈍重な感じはなく、LP両面の最後まで興奮状態が維持されるのが素晴らしい。心地よくノイズに身を委ねることができて、無駄に頭使う必要がないのがサイコーですね。癒されます。

…とはいえ、ただ無軌道にデタラメやってるだけでもなく、それなりに演奏者間のやり取りや変化があるし、何よりVirginia Gentaの音の説得力がハンパないです。何年か前に↓の動画を観て惚れ込んでいたんですが、この人めちゃくちゃイイ。

 


VIRGINIA GENTA & CHRIS CORSANO live in Lisbon, August 2008

何度見てもカッコイイ。サックスを上下に振りながら吹く姿もアツい。

 

個人的に音一発でやられちゃうっていうサックス奏者が何人かいるんですが(広瀬淳二、一時期のアーチー・シェップガトー・バルビエリ等)、この人もその1人です。ちなみに、ググっていたらこの人に対するメールインタビューを発見して(前半後半)、その中で「阿部薫に少し似ている」という話が出てたんですが、そんなに似てないというか、アプローチはだいぶ違うような気がします(しかしこのインタビュー、イタリアのフリージャズ事情なんかも話されていて実に興味深いです)。

彼女のHPを見ると、結構たくさん作品出しているし、ヨーロッパや北米でツアーもやってるみたいです。しかし、LPやカセットでのリリースが多く、日本では流通していないものばかり。何とかして来日してくれたら、物販で色々買い漁りたいんだけどなあ…。本作もLPのみのリリースで、しかも150枚限定のようですが、今ならAmazon等で簡単に購入できますので、この手のフリージャズやノイズ、インプロが好きな方はぜひ。オススメです!!

 

 

≪参考動画≫


JOOKLO DUO @ Philadelphia, April 4, 2014 (1)

この2人は長年「Jooklo」という言葉を入れたユニットを色々やっているようです。youtubeにはプリペアドピアノを弾いている動画なんかも。

 


Maranata @ SuperDeluxe - March 2009

ノルウェーの2人の来日ライブの映像。ドラムはにせんねんもんだいの人。動画の投稿者はLasse Marhaug本人なのかな?