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たぶん思ったことあんまりまちがってない

ジャズ アルバム紹介やライブの感想など 

志人・スガダイロー 詩種

今年最大の話題作の1つでしょう。

詩種

詩種

志人(Vo、朗読)、スガダイロー(Pf)、東保光(B)、服部マサツグ(Ds)

 

6パートに分かれた昔話風の寓話(?)の朗読の間にラップ曲が挟まれています。朗読の物語と他の曲が微妙に繋がっており、全体として大きな物語を構成するつくり。

 

志人さんは降神のMC。MSC、韻踏合組合Temple ATS、この辺りは高校生の頃さんざん聴きました。どれもちょっぴりアングラで、高いスキルを持ったMCが集まっており、鬱屈した思春期の私には刺さりまくっていました(笑)その中でも降神の存在は際立って異彩を放っており、ジャズにハマって日本語ラップを聴かなくなってからも、降神だけはたまにCDを引っ張り出して聴いていました。降神の1stと、なのるなもないのソロアルバムは、今でも傑作だと思っています。

 

スガダイローさんは現代最高のフリージャズピアニストの1人でしょう。かの“天才アケタ”も「スガ・ダイローと石田幹雄という若き存在は、将来のジャズ・ピアノ界への不安をぶっとばしてくれる大朗報です!!嬉しい!」と書いています(アケダイローオーケストラのライナー)。秘宝感やblack sheepで何度かライブを観ていますが、恐ろしく速いスピードの打鍵、斬新なハーモニーセンス、怒涛のパワープレイ、本当にすごい。また、コンセプチュアルなアルバムを量産しているというのも特徴的ですね。欧米のフリージャズではアホみたいなペースでライブ盤をガンガン出す人とかいますが、スタジオ録音で、しかもそれぞれにコンセプトの異なるアルバムをこれだけのペースで出している人というのは、少なくとも日本にはあまりいないと思います。

 

 本作はそんな志人とスガダイローの共作。「志人×ジャズってあったっけ」と考えてみると、そういえばMASのアルバムに降神が1曲参加していますね。あれもなかなかカッコイイ。「スガダイロー×ヒップホップ」では、STERUSSの楽曲に鈴木勲さんと一緒に参加したことがあるそうで(CDは持ってませんがニコ動で見ました)。

 

本作は前情報なしに購入したので、聴く前は「スガダイロートリオの激烈フリージャズの上で志人の超速ラップが炸裂!」みたいなものになるかと思っていたのですが、全体としてはストーリーテリングが大きなウェイトを占めており、ダイローさんのプレイも静謐な場面が結構多かったですね(もちろん爆発する場面あり)。かつて「時計の針」で「血染めの鉢巻もらって印税気にして死んでろ 特にお前と彼ら」と攻撃的にラップしていた志人さんの発するメッセージも、だいぶ柔らかくなったと言うか、達観した感じに。本作の「わとなり」を初めて聴いたときは、「おいおい、平和な大団円すぎるじゃないか。どうしちゃったんだ」と思いましたが、最終曲「ニルヴァーナ」まで聴いて、単なる平和ボケの理想主義に堕したわけではないと思い直し、勝手に一安心。

アルバム全体で1つの物語になっているので難しいんですが、あえて1曲ベストを挙げると、「ニルヴァーナ」ですね。なのるなもないの「帰り道」と並ぶ名曲だと思います。

アルバム全体としては、非常に面白かったのですが、手放しで「最高!!」と言いにくい感もあり、自分の中での評価はあまり定まっていません。それでも、一聴の価値ある作品としておススメします。「ラップはちょっと・・・」なんて思っているジャズファンの方も、物は試しと思って一度聴いてみてはいかがでしょうか。

 

降神(おりがみ)

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渋さ知らズを弾く

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