たぶん思ったことあんまりまちがってない

ジャズ アルバム紹介やライブの感想など 

石塚真一『BLUE GIANT』

論文執筆で色々と追い詰められていますが、息抜きにこんなのを読みました。

 

BLUE GIANT 1 (ビッグコミックススペシャル)

BLUE GIANT 1 (ビッグコミックススペシャル)

 

 

『岳 みんなの山』で知られる石塚真一の新作ジャズ漫画です。小学館のHPからあらすじを。

 

ジャズに心打たれた高校3年生の宮本 大は、川原でサックスを独り吹き続けている。

雨の日も猛暑の日も毎日毎晩、何年も。

「世界一のジャズプレーヤーになる…!!」

努力、才能、信念、環境、運…何が必要なのか。

無謀とも言える目標に、真摯に正面から向かい合う物語は仙台、広瀬川から始まる。

 

まだ1巻で導入って感じなので何とも評価しにくいのですが、まあそこそこ楽しめました。ディティールの書き込みはしっかりしているし、ジャズファンなら分かる小ネタが散りばめられているのも好印象。同級生に「ジャズが好き」と言っても「お洒落」とか「気取ってる」と思われて全然理解されないなんていう現代ジャズファンあるあるも。

ただ、主人公がどんな演奏をしているのか漫画を読んでいるかぎりでは全然ピンと来ないんですよね。主人公が作中で聴いているのは50~60年代のベッタベタな名盤ばかりなんですが、完全に独学でサックスを身に付けた彼は、ハチャメチャで無軌道で、とにかく大音量で強烈な演奏をしているように描かれています。そんな主人公が川原で一人猛烈に吹きまくっているシーンから想起されるのは、個人的にはどう考えても阿部薫なんですが、デクスター・ゴードンやらハンク・モブレーベニー・ゴルソンの真似をしてそういう演奏になるとも思えず・・・。挙句の果てに、ラストシーンではある初期モダンジャズの巨人(ネタバレになるので名前は伏せます)をイメージさせるシーンも。うーむ、やはり音についてのイメージがさっぱり湧かないですね。

また、先述のような「あるあるネタ」的なリアリティの部分と、ファンタジックに描かれる演奏シーンとの整合性もいまいち取れていないような気がします。作品内リアリティのラインが分からないので、どういう気持ちで読んでいいのか、何とも落ち着かないのです。

やや厳しめのコメントをしてしまいましたが、連載物なので完結するまではきちんとした評価はできません。1巻にはまったく登場しなかったフリージャズやコンテンポラリーなものがどう描かれるのかちょっとだけ期待しつつ(時代設定を現代に置いているのに無視されたらガッカリです)、しばらくは読み続けていくつもりです。

 

 

 


大人気漫画『BLUE GIANT』第一集&公式コンピレーション発売記念!ダイジェスト ...

公式のPVのようなものがありました。BGMはロリンズにガレスピー。うん、やっぱり作中の鮮烈な演奏シーンの描写とあってない気がする(笑)。

 


「坂道のアポロン」CM - YouTube

近年のジャズ漫画と言えば坂道のアポロン。こちらは時代設定が昭和なので違和感なし。後半の展開がやや駆け足で残念でしたが、良い青春漫画でした。アニメ版で演奏を担当していたのは松永貴志さん、石若駿さんといった日本の若手ミュージシャン。類家心平さんも良い「演技」をしていました。