たぶん思ったことあんまりまちがってない

ジャズ アルバム紹介やライブの感想など 

Matana Roberts / COIN COIN Chapter Two: Mississippi Moonchile

先日届いてからずっと聴いています。

 

Coin Coin Chapter Two: Mississippi Moonc

Coin Coin Chapter Two: Mississippi Moonc

 

Matana Roberts(As, Vo etc.)、Jeremiah Abiah(Operatic Tenor)、Jason Palmer(Tp, Vo)、Shoko Nagai(Pf, Vo)、Thomson Kneeland(B, Vo) 、Thomas Fujiwara(Dr, Vo)

 

アルト奏者・作曲家であるマタナ・ロバーツのCoin Coinというプロジェクトの第2弾。Coin Coinは全12章(!)でアメリカの人種やジェンダー、パーソナルな部分も含んだ歴史などをテーマにした作曲プロジェクトとのこと。ちなみに、前作はエリオット・シャープが選ぶ『死ぬまでに聴くべき10のフリージャズ・アルバム』という企画で、「ここ10年で最高のフリージャズ・アルバム」と絶賛されていました。その前作は16人編成のラージ・アンサンブルでしたが、今作は一般的なサックスクインテットテノール歌手(クレジットの表記はオペラティック・テナー)という編成。

これがもう素晴らしいの一言。ジャズミュージシャンのアメリカ史的なものをテーマにした作品というのはかなりたくさんあって、晩年のポール・モチアンであるとか、チャーリー・ヘイデンだとか、ワダダ・レオ・スミスだとか、直接歴史をテーマとせずとも、アメリカのある種の「伝統音楽」を取り入れる形で描き出すような作品は相当数あるように思います。ジョン・ゾーンなんかも先鋭的な形でそうした試みを行ってきた音楽家と位置づけられるかと思いますが、このマタナ・ロバーツの作品はそうした作品群の中でも最良のものの一つではないでしょうか。最近の佐村河内守氏のゴーストライター騒動などを見ていると、音楽の内容と「物語」を切り離すのは難しいということを痛感しますが、この作品は発せられている「音」の部分と、「物語」や「テーマ」が理想的な形で融和しているように思います。決して「物語」先行になることはなく、合間に挟まれるスポークンワード的なものもきわめて音楽的です。

ゴチャゴチャと御託を並べてしまいましたが、シンプルにカッコイイですよ。最後の”Do not weap for me …”というつぶやきなんて、ローランド・カークの”Prez …”ばりに感動的。2013年中に聴いていたら間違いなく年間ベストに入れていたでしょう。

このマタナ・ロバーツ、今はニューヨークを拠点に活動しており、かつて在籍していたシカゴAACMからは離れているようですが、久々に"AACM is NOT dead !"と思わされました(ライナーノーツにAACMメンバーへの謝意が記されていたりもします)。彼女はFree Jazz Blogの「Musician of the year 2013」にも選ばれていて(他の受賞者はイ・オッキョン、メアリー・ハルヴァーソン、ケン・ヴァンダーマーク、ジョン・チカイ、テイラー・ホ・バイナム、ジョン・ブッチャー!)、今後も要注目の人だと思います。 おススメです。

 

 

≪関連動画≫


Matana Roberts - "Amma Jerusalem School" - YouTube

組曲というかアルバム全体で大きな1曲という構成なので通して聴くべきなのですが、1曲抜粋した動画を。

 


Matana Roberts - River Ruby Dues (2013) - YouTube

 


Matana Roberts' Coin Coin Chapter Two ...

こちらはライブ。最後のところが切れているのが惜しい…。