たぶん思ったことあんまりまちがってない

ジャズ アルバム紹介やライブの感想など 

1日遅れのドルフィー追悼

このブログでも何度か書いていますが、私がジャズにどっぷりハマっていくきっかけを与えてくれたのは、エリック・ドルフィーでした。そのドルフィーが亡くなったのは1964年6月29日。昨日がちょうど没後50年の記念の日でした。

 

 


Eric Dolphy - Booker's Waltz - YouTube

現在25歳の私が高校1年か2年の頃、「ジャズって何かかっこよさそう」とか思いまして、地元の図書館で名前だけ知っていたマイルスやコルトレーンを借りました。その時に聴いたジャイアント・ステップス』などは、当時ジャズリテラシー皆無でアルトサックスとテナーサックスの違いも分からなかった私には、正直ピンと来ませんでした。

同じ頃、音楽好きの兄が持っていたジャズのCDもいくつか聴いたのですが、その中にあったのが、ドルフィー『ファイブ・スポット vol.1』『メモリアル・アルバム』だったのです。何も知らないままMDにダビングしてこれらのアルバムを聴いたとき、即座に感動に打ち震えたというようなことはなかったのですが、ドルフィーの音、特にバスクラの音の凄みというか迫力のようなものが妙に印象に残ったのでした。しかし、その後はストレートにジャズにハマったのではなく、高校時代はこれまた兄の影響でメタルやヒップホップ、ノイズを主に聴いていました(これもたしか高2の頃ですが、当時兄に連れられて高円寺20000Vかどこかで観たインキャパシタンツのライブは衝撃的でした)。

そして、大学に入ってバイトを始め、自分の趣味に使えるお金が増えたときに、フリージャズや現代音楽を経由してモダンジャズを聴き始めました。そこから、チャーリー・パーカーより先にエヴァン・パーカーを聴いていたという歪んだジャズライフが始まったのですが、その一番最初の頃に「そういえば兄に借りてダビングしたMDがいくつかあったよな」と思って引っ張り出してきたドルフィーに、完全にノックアウトされてしまったのです。それをきっかけに、ジャズのガイド本なんかも読みつつミンガスを中心にドルフィー関連作を買い集めるようになり、ジャズ地獄の泥沼に引き込まれてしまったというわけです。

 

 

そんなこんなで、いまだにドルフィーにハマり続けているのですが、私にとってのドルフィーの最大の魅力は、何と言うべきか、異質感・異次元感のようなものです。それが特異な跳躍フレーズによるものなのか、音程によるものなのかは分からないのですが、明らかに他の演奏者の中で際立って聴こえるように思うのです。

 


Eric Dolphy & John Lewis Afternoon In Paris Play ...

たとえば、ジョン・ルイスのこれ。美しく整ったアンサンブルで、ジム・ホールのプレイも卓越していると思うのですが、ドルフィーが出てきた瞬間のゾクゾクする感じがたまらなく好きです。こうした異次元感という点では、ドルフィー自身のリーダー作よりも、オリバー・ネルソンの『ブルースの真実』みたいな他人のリーダー作の方がハッキリ際立って聴こえるかも。

ドルフィーに影響を受けたミュージシャンって、サックス奏者に限らず相当な数いると思うのですが、ここまでの個性を獲得している人はいないのでは。実は昨夜、『dj sniff、ダウトミュージックを斬る。』のレコ発ライブに行ってきまして、坂田明さんや大友良英さん、広瀬淳二さんといった超強力なメンツによる色んな組み合わせの演奏を観てきたのですが(どれも素晴らしかった。特に坂田さん、広瀬さんのサックスには痺れました)、聴きながら思ったのが、「この組み合わせのどこにドルフィーのソロが入っても、全部異質に聴こえそうだな」ということ。暴力的なノイズの中にあっても、ドルフィーのアルトソロなら埋没することはないだろうと感じたのです。

 

 

そんなドルフィーの初リーダー作が出たのが1960年。チコ・ハミルトンのバンドの録音がその前にも出ていますが、いずれにせよ正規の録音が残っている活動期間は10年にも満たないわけで、やはりその死は早すぎたと言うべきでしょう。いまドルフィーが生きていたらどんな演奏家になっていたんだろうなんて夢想しつつ、ドルフィーに心からの敬意と感謝を捧げたいと思います。

 


Eric Dolphy - God Bless the Child - YouTube

ドルフィー無伴奏管楽器ソロのアルバムとか聴きたかったなあ…。