『Progressive Jazz 進化するソウル フライング・ロータスとジャズの現在地』を読む
うーん、これはいかがなものか。
ele-king別冊 プログレッシヴ・ジャズ 進化するソウル ― フライング・ロータスとジャズの現在地 (ele-king books)
- 作者: 松村正人
- 出版社/メーカー: Pヴァイン
- 発売日: 2014/09/30
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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ele-kingの別冊として刊行されたジャズ本を読みました。タイトルの付け方からして『Jazz The New Chapter~ロバート・グラスパーから広がる現代ジャズの地平~』を意識してるっぽいですが、執筆陣は被ってそうであんまり被ってないのかな?菊地成孔、佐々木敦、湯浅学、大谷能生、山崎春美etc.となかなかに豪華なメンツです。
で、感想なのですが、『JTNC』に対するカウンター(リアクション)としては不満が残る出来と言わざるを得ないかなと。『JTNC』が(その内容をどう評価するかということは別として)「ロバート・グラスパーから現代ジャズの地平が広がっている」というコンセプトを明確に打ち出して、そのコンセプトに即して全体を構成することに成功していたのに対し、前面に押し出しているフライング・ロータスを上手く位置づけられていないように感じました。
Flying Lotus - Never Catch Me (Official Audio) ft ...
ちなみに、副題の「進化するソウル」ってのも何のことだか皆目分かりません(笑)
個々の対談・インタビュー・論考には面白いものもあるのですが(菊地成孔さんは流石の面白さです)、フライング・ロータスを取り上げた第1章と、それ以降の章の内容が特に噛み合っていないように思えて、とっ散らかった印象を受けてしまいました。
そして、この本の主著者である松村正人という人の評論のスタイルが苦手でした。ポエティックな文体が個人的にキツくって…(ググったら『Studio Voice』の編集部にいた人だと知って妙に納得)。「評論」というものに客観性は求めていませんし、平岡正明みたいに主観性全開でもちゃんと成立させているものこそ正しいと思っていますが、たとえば「現代日本のスライ&ロビーこと千葉広樹&服部正嗣」みたいな表現は、色んな意味でアウトでしょう。
誤植・誤記の類がやたら多いのもいただけません。百歩譲って単純な誤字・脱字は良いとしても、「スガ・ダイロー」と「スガダイロー」が混在しているのとかはダメですよね。
このブログでは基本的にネガティブな評価のものは取り上げないことにしているのですが(と言いつつ『Blue Giant』を軽くdisったりしてますが)、これは執筆陣を見て事前の期待値が高かっただけにガッカリしたということで記事化しました。1700円(+税)を払って購入した一読者としては、「これだけのメンツを集めたならもっと面白い本ができたのでは?」というのが正直な感想といったところです。