講演「My Name is Albert Ayler」@四谷いーぐる
久々にいーぐるへ。
2014年12月20日(土)My Name is Albert Ayler@四谷いーぐる
吉田隆一、須藤輝
四谷のジャズ喫茶いーぐるで、アルバート・アイラーについての講演を聞いてきました。今月発売の雑誌『サックス・マガジン』にバリトンサックス奏者の吉田隆一さんがアイラーの奏法解析を寄稿していまして、その論稿をベースに、アイラーの音源を実際に聴きながら吉田さんと須藤輝さんが解説・トークするという企画。非常に面白かったです。
サックス・マガジン Vol.2 (CD付) (リットーミュージック・ムック)
- 作者: サックス・マガジン編集部
- 出版社/メーカー: リットーミュージック
- 発売日: 2014/12/10
- メディア: ムック
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聞きながらずっとメモをとっていたのですが、ここで解説の内容を全部記すと発売中の雑誌の”ネタバレ”になってしまうので、かかった曲のリストと特に面白いと思った部分だけピックアップして書こうと思います。
①『Spritual Unity』より「Ghost: Variation2」
吉田:非演奏者にも伝わりやすい上手さと、伝わりにくい上手さがある。
⇒アイラーは聴いた人に”上手い”とか”下手”とかいう判断を許さない領域に到達。
最初期の音源を聴くと、伝わりやすい意味で”上手い”。
②『Holy Ghost』(ボックスセット)より「Summertime」
吉田:すごく端正なプレイをちゃんとしている。単純に音程が良い(たぶんロリンズより良い)。
非常にリズム感が良い。ビート感が明確。
③同ボックスより「On Green Dolphin Street」
吉田:自分をぶっこわしてやりたい衝動のようなものを感じる。
メチャクチャにしたいんだけど、上手すぎてメチャクチャにならない感じ。
④『My Name is Albert Ayler』より「Billie's Bounce」
吉田:明らかに自信に満ちている。無理してヘンなことをしようとしていない。
須藤:「アイラーは初期になればなるほど過激」とか、「アイラーは最初からぶっ壊れたことをしているのがすごい」といった言説があるが、そんなことはない。
⑤『Swing Low, Sweet Spiritual』より「Goin Home」
吉田:アイラーの大きな特徴は、非常に均質で正確なビブラート。
この時期、プラスチックのリードを使っていること。
⑥『Spirits Rejoyce』より「Prophet」
須藤:アイラーにとって、自分以外の管はどうでも良かった?
<but>リズムセクションは強力で、こだわりを感じる。
吉田:パルス系のドラマーを選んだのは、自分を解放するためではないか。
⑦『In Greenwich Village』より「For John Coltrane」
吉田:このころ、ビュッフェ・クランポン社とエンドーザー契約を結んでいる。
当時「アイラーみたいな音が出したい!」と思ってビュッフェを買った人なんているのか?
須藤:コルトレーンが買ったのでは?
一同:(爆笑)
⑧『New Grass』 1曲目、2曲目
⑨『Love Cry』タイトル曲
⑩『Music is the Healing Force of the Universe』タイトル曲
須藤:インパルスはアイラーをどうしたかったのか。
吉田:コルトレーンに次ぐドル箱にしたかったはずが、シャボン玉ホリデーに。
須藤:インパルスの方針でこうなったが、アイラー自体は変わっていない。
吉田:ボブ・シールが悪い。
⑪清水靖晃『北京の秋』
⑫ジョー・ヘンダーソン『Page One』
(アイラーの影響、あるいは共通項。詳細は『サックス・マガジン』参照。)
⑬『Nuits De La Fondation Maeght』より「Spirits Rejoyce」
吉田:加藤総夫いわく、「モンクは考えて弾いている」。
アイラーは自分を信用し、自分にまかせている。
ほかにも面白い解説・小ネタ・裏話などたくさんありましたが、とりあえずこの辺で。いーぐるの立派なシステムでアイラーをじっくり聴くというだけでも得難い体験でしたし(久々に聴いた「Goin Home」には本気で感動してしまいました)、今回は質問もできたので大満足。今後も機会があれば吉田さん、須藤さん企画には積極的に足を運びたいと思います。