たぶん思ったことあんまりまちがってない

ジャズ アルバム紹介やライブの感想など 

Matthew Shipp / To Duke

これはやられました。あっぱれ。

 

 

To Duke

To Duke

 

 Matthew Shipp(P), Michael Bisio(B), Whit Dickey(Dr)

 

 

マシュー・シップのエリントン・トリビュート作を聴きました。メンツは現在のレギュラートリオのようで、イーヴォ・ペレルマンリズムセクションだったりもします。

個人的にシップと言えば、デヴィッド・S・ウェアのカルテットでの演奏が印象深く、最近ではジョン・ブッチャーとのデュオ『At Oto』なんかも最高でしたが、リーダー作はほとんど聴いたことがありませんでした。かつて聴いたThirsty Earレーベルのもの(『Nu Bop』とか『Equilibrium』)がどうにもピンと来なかったり、そもそもピアニストのリーダー作で管が入っていないものはあまり聴かなかったりしまして…。

ところが、先日こちらのサイトで本作の「In A Sentimental Mood」を聴いて一目惚れならぬ"一耳惚れ"してしまい、すぐさまdiskunion新宿店で購入しました。アルバム全体のイントロ的な短いトラックを含めて4曲がシップのオリジナルで、他7曲はおなじみのエリントン・ナンバー。それも、ちょっと捻った選曲とかではなく、「Take the A Train」「Mood Indigo」といった超有名曲ばかりです。もう腐るほどカバーされまくっているエリントン・ナンバーに対して、変化球や飛び道具に逃げることなく、自分のスタイルで真っ向勝負。それできちんと新鮮でカッコイイ音楽になっているのが見事です。

 

 

軽くググってみたところ、シップが本作と同じトリオで『Root of Things』をリリースした時のJazz Right Nowのインタビューが出てきました。このインタビューで、「このトリオは何か新しい方向性を示しているか?」と聞かれて、シップは「私は確実に以前よりもっと(伝統的なピアノ・トリオのような)ジャズのサウンドに足を踏み入れようとしているが、このトリオの音楽が指し示すのは、サウンドとパルスの連続体だ」というように答えています(※NY在住のピアニスト蓮見令麻さんがブログで日本語訳されていて、非常に面白いので勝手ながらリンクを貼らせていただきます)。

エリントンという「ジャズの伝統」の一つの頂点に対し、きっちり自分のトリオのサウンドをもって向き合っていく。これはなかなかできないことで、その辺に転がっているヌルいエリントンカバーとは一線を画していると思います。オリジナルを知っている方がより面白いとは思いますが、あまりエリントンを聴いたことがなくても、コンテンポラリー/アヴァンギャルド的なジャズを愛好している人なら楽しめるのでは。オススメです。

 

 

 

 

 

<おまけ>

エリントン集のオススメというか愛聴盤を適当にいくつか挙げてみたいと思います。

 

Plays Duke Ellington

Plays Duke Ellington

 

ジュリアス・ヘンフィルがいた頃、オリジナルメンバーのWSQのエリントン集。これはもうめちゃくちゃ好きで。4人がそれぞれ編曲していて(ヘンフィルが3曲、ブルーイットとレイクが2曲、マレイが1曲)、その違いも面白いです。

 

エッセンシャル・エリントン(HQCD仕様)

エッセンシャル・エリントン(HQCD仕様)

 

 日本でエリントン(とカーラ・ブレイ)と言えば、渋谷毅さん。渋谷毅オーケストラやピアノソロのアルバムでもエリントンを取り上げていますが、このエッセンシャル・エリントンはエリントン特化のバンド。1枚目である本作は、松風鉱一(As, Bs, Fl)、峰厚介(Ts)、関島岳郎(Tuba)という面白い編成。ピアノとフルートのデュオで演奏される「Passion Flower」とか最高です。外山明(Dr)さんの加わった2枚目や、ボーカル集の3枚目も素晴らしい。

 

Day Dream

Day Dream

 

こちらはアーチー・シェップのエリントン集。 インパルスやBYGのドロドロと暑苦しいシェップも好きですが、デンオンやらスティープルチェイスから出しているものにも結構良作があると思います。これもちゃんと"シェップらしさ"が出ているのが良いですね。そう言えば「Day Dream」ってカーリン・クローグとのアルバムでも演ってましたが、シェップにとって思い入れが強い曲だったりするのかな。

 

2 for Duke

2 for Duke

 

 イタリアのサックス奏者マックス・イオナータとピアノのデュオ。リラックスして聴ける、ものすごく真っ当で良質なジャズです。選曲は結構渋めで、「All Too Soon」「Just Squeeze Me 」「Heaven」など。