泉邦宏 きけとりさんのこえ
全身小説家……ではなく、全身音楽家。
泉邦宏(Vo, Sax, Gt, B, Drほかいろいろ)
泉邦宏さんの新譜を買いました。多重録音による完全ソロ作で、作曲もすべて泉さん。サックスはもちろん、ヴォーカルやギター、ベース、ドラムから、「とりさん」(にわとりのおもちゃ?)まで、すべて1人で演奏しています。
藤井郷子オーケストラや泉邦宏トリオ(高岡大祐Tuba、池澤龍作Dr)で聴けるように、卓越したサックスのインプロバイザーである泉さんですが、本作では泉さんの「うた」が前面に押し出されています。ヴォーカルだけでなく、たくさんの楽器群も非常によく「うた」っていて、サックスなんかは肉声の延長線上にあるような生々しさを感じます。
シンプルなメロディに乗せて歌われている内容も、「とんかつ定食うまい」といった非常に生活感あふれるものばかり。いくつか「反戦歌」的なものもありますが、それらはただ「政治的なメッセージを歌っている」のではなく、やはり生活の中から出てきたものという色が濃いように思います。
iTunesに突っ込むと「Jazz」に分類されましたが、これはもはや「泉邦宏」というジャンルの音楽でしょう。普段こうした「うた」がメインのものはあまり聴かないし、聴いていてエキサイトするようなタイプの音楽でもないのですが、なぜか繰り返し聴き続けてしまう不思議な魅力があります。
傑作『ソロ・ライブ!』収録の曲。素晴らしい。
渋さでもおなじみ、加藤崇之さんの「皇帝」。これもいいなあ。