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たぶん思ったことあんまりまちがってない

ジャズ アルバム紹介やライブの感想など 

10年前のStudio Voice発掘

駄話 書籍

十年ひと昔。

 

 

 

 

我が家(実家)の物置き部屋を整理していたら、雑誌Studio Voiceの2005年5月号が出てきました。特集は「ポスト・ジャズのサウンドテクスチュア」で、表紙は菊地成孔さん。2005年というと、菊地・大谷コンビの『東大アイラー』が出た年であり、情熱大陸やら水曜WANTED!(ラジオ番組)やらで菊地さんの各方面への露出が増えていた時期ですね。この雑誌でも、菊地さんは4ページにわたって大々的に取り上げられています。他には、大友良英さんや不破大輔さんのインタヴューがあったり、故・副島輝人さんとECDさんの対談が載っていたり。
ここに提示されているのは、Studio Voiceという雑誌が10年前に「ジャズの最先端」と考えていたもののようです。それを10年経った今読んで、興味深いと思ったところを少しだけ紹介してみようかなと。

 

 

<目次(ジャズ特集部分のみ抜粋)>

 

・ジャズその他(平岡正明湯浅学
菊地成孔インタヴュー(南部真里)
・みっつの主題からみる菊地成孔東琢磨/北尾修一/岸野雄一
・菊地によるジャズ10枚のプレゼンテーション(聞き手=三田格
大友良英インタヴュー(牧野琢磨
大友良英から考えるジャズとサントラの関係(今村健一)
渋さ知らズ一斉アンケート ジャズってなんですか?
不破大輔インタヴュー(湯浅学

 

私の考えるジャズ

・即興第一世代(竹田賢一)
フュージョンは越境していたか(若杉実)
梅津和時とNYジャズ(塚本実)
・日本のジャズ重要盤50(土佐有明/南部真里/沼田順/湯浅学/吉本秀純)
小西康陽とジャズ(北沢夏音
・クラブジャズのコア(春日正信)
・ジャズ・ノット・ジャズ:90-00S(原雅明

 

ニュー・ジャズ・ギルド

大谷能生インタヴュー(沼田順)

・秋山徹次インタヴュー(南部真里)
・simインタヴュー(土佐有明
・西海岸ジャズと日本の関係(山口元輝)
・即興の現場(伊東篤宏、談:鈴木美幸、脇谷浩昭)
・対談:副島輝人×ECD
・ジャパニーズジャズ・マップ
・ハコ聴きのジャズ(湯浅学
・ブッチ・モリスとコンダクションの20年(恩田晃)
・ジャズ・プレイリスト 大友良英南博/中村としまる/秋山徹次/渡邊琢磨/片山広明/梅津和時/恩田晃/Shing02藤原大輔大谷能生不破大輔
・アンケート ケリー・チェルコ/Dill/伊藤匠/関根靖/大蔵雅彦/ミドリモトヒデ

 


こうして目次を並べてみるとかなり面白そうなんですが、実際に読んでみると色々消化不良な感じでした。校正がガバガバで誤字・脱字だらけだったり、段組みや文字の背景色のせいで恐ろしく読みにくかったりといった内容以前の問題もあるんですが、何よりも1つひとつのインタヴューやコラムの字数が少なすぎるのがもったいない。日本のものに偏っているとはいえ、相当幅広く取り上げているんですが(Improvised Music from JapanStudio Weeまで!)、どれも字数が少なすぎていまいち踏み込めていないんですよね。JTNCのような明確な編集方針もうかがえず、とりあえず色々ぶち込んでみたんだなという印象。

こんな具合に無責任なケチをつけるのは簡単なわけですが、面白いと思ったところもありまして。

 


大友良英インタヴュー

大友「これでも僕は非常にメロディ型の人間なんですよ。で、すごく極端なことを言えば、フィラメントでやっていることとかノイズとかを自分の中で左端に置いたとしたら、反対側に昭和歌謡のようなメロディがあって、その間がすっぽり抜け落ちてるようなとこありますね。メロディはその人の生い立ちや記憶に起因するものだと思うんだけど、そんな手垢のこびりついたものと、機械がカタカタ鳴ってるだけの音を面白いと思う感覚とが僕の中では混在していて。その両方にヒエラルキーが与えない原文ママ音楽が作れないかなと思ってるんです。」

 

当時、大友さんがレコード大賞を獲ったり、紅白に出場したりするとは誰も思ってなかったでしょうね。しかし、この10年で大友さんがやっていることを見ると、このコメントには「なるほどなあ」と思う部分が。

 

see you in a dream~大友良英 produces さがゆき sings~

see you in a dream~大友良英 produces さがゆき sings~

 

そういえばこれも2005年リリースだったんですね。大友さんプロデュースの中村八大集。良企画。おすすめです。

 

 


②副島輝人×ECD

副島「ジャズは変化するからジャズなんです。世の中がどれほど変わろうが、ジャズのDNAは残っていくんです。即興とリズムと肉体。これだけはなにが起こっても消滅することはない。

 

副島さんのジャズ観がぎゅっと凝縮されたフレーズ。この雑誌の中で、大友さんが「ジャズ」というククリの中に色んなものをぶち込んでしまうことの意味のなさ、「何がジャズか」なんて結局個人的な思い込みに過ぎないこと等を語っていて、私もそれは正しいだろうと思っています。ただ、私は副島さんがその生涯を通して論評し、紹介し、オーガナイズし、愛し続けたような「ジャズ」が好きだし、その可能性をある種ロマンティックなまでに信奉しています。

 


渋さ知らズ「本多工務店のテーマ」Live in Zürich 1998

2分半頃から、踊り狂う副島さん。晩年もピットインの客席でちょくちょくお見掛けしました。

 


③アーティスト・プレイリスト120
12人のミュージシャンが「ジャズ」を10枚ずつ選ぶという企画。

片山広明さんや梅津和時さんのチョイスは納得が行き過ぎるくらい納得の行くもので、AEOC『Message to Our Folks』『Nice Guy』、ICPオーケストラ『Bospaadje Konijnehol I』、コルトレーン『Live at The Village Vanguard Again』、オーネット『This is Our Music』などが並んでいるのを見るとうれしくなってしまいます。
そうかと思えば、Shing02さんがアート・ブレイキー『Free for All』のようなハードバップの名盤の中にハン・ベニンクのソロを混ぜていたり、秋山徹次さんがシドニー・ベシェルイ・アームストロングと一緒にジェームス・ジトロを選んでいたり、ちょっと意外なものも。
企画自体はベタといえばベタですが、色んな意味で面白かったです。

 

 


Art Blakey & The Jazz Messengers - Free For All

普段フリージャズがどうのこうのということばかり書いていますが、実はジャズ・メッセンジャーズも結構好きで。ウェイン・ショーターがいた頃の作品は愛聴盤がいくつかあります。

 


この10年前の特集を読んでみて、思ったほど「時代を感じるなー」というものはなかったですね。強いてあげるなら、クラブジャズのところで「とりあえずバヤカは聴いたほうがいい。彼らはジャズの未来への鍵を握っている」とか書かれているところと、デヴィッド・ヴォイスにそこそこのスペースが与えられていることくらいかな。

雑誌に関しては、経済的・物理的体力の問題があって収集してないんですが、こうしてたまに古いものを読んでみると面白いですね。中古レコードのライナーノートを見ても、「当時はこの人こんな扱いだったのか」とか思うことありますし(なんだったかロフトジャズ系のレコードのライナーノートで、リッチー・コールが「これからの時代を担っていくプレーヤー」みたいに紹介されていたのを見た記憶が)、古本屋やジャズ喫茶で昔のジャズ批評なんかを読むと色んな発見があったりして。

私はちょうど2005年頃に初めてジャズに触れ、大学に入学した2007年あたりから本格的にCD等を集めるようになったので、それ以前のことは本やネット等で得た知識しかないわけです。もはや雑誌というメディアは旧時代の遺物になりつつあるとはいえ、後から振り返ってみるためにも、その時代時代の空気の一部を切り取ったものが残っていくというのは重要なことだなと思っています(SNSの方が情報発信も交流も容易なのにブログという形式に拘っているのは、過去記事を検索・閲覧しやすいという理由だったりします)。

今流行りの(?)『Jazz The New Chapter(JTNC)』も、何だかんだ全巻買っているのですが、10年後、20年後に読み返したら面白いと思うんですよね。物の管理が上手い方ではないんですが、きちんと取っておこうと思っています。