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たぶん思ったことあんまりまちがってない

ジャズ アルバム紹介やライブの感想など 

2015年12月26日新宿PIT INN 50周年記念 新宿ジャズフェスティバル(1日目)

祝!50周年!

 

 

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我が最愛のジャズクラブ、新宿PIT INNの 50周年記念フェスに行ってきました。思えば、私が初めて生で本格的なジャズの演奏を観た場所もピットインでした(確か南博さんのGo There!だったはず)。今も月数回くらいは通っていますし、色んな意味で非常に思い入れの深い場所です。そのピットインの50周年を祝うフェス、なんと山下洋輔トリオのリユニオンをやるということで、なんとか都合をつけて参加してきました。

会場である新宿文化センターの大ホールは定員約1800名。普段のピットインのキャパはたぶん100ちょっとです。以前ジャズ非常階段を観た時、立ち見込みでギュウギュウに客が入ってたんですが、あの時で150~160人くらいだったはず。なので、1800人のホールがほんとに埋まるのかなと思ってたんですが、少なくとも1階席は満席でした(2階席は未確認)。ピットインのファンがそんなにいたことにビックリ。さらに、ピットインの1月のスケジュール表の表紙がblacksheepのアニメ絵で、しかもラノベ風の題字が付いていて、またビックリ。さらにさらに、プログラムと一緒に入っていたフライヤーでドン・モイエの来日(しかも生活向上委員会大管弦楽団の公演!)を知って驚愕。思わず「うおっ!」とか声を出してしましました。

 

そんなこんなでビックリしているうちに、菊地成孔さんの司会でフェスが幕を開けました。本来は亡くなった評論家の相倉久人さんが司会を務めるはずだったとのことで、フェス冒頭では相倉さん(と長年ピットインのPAをされていた藤村保夫さん)のために30秒間の黙祷が捧げられました。菊地さんらしいと言えばらしいんですが、あれはやや演出過剰だったかな。しかし、その後の菊地さんの司会っぷりは流石でした。各バンドのセットチェンジの間をピットインのオーナーとのトークや昔の写真のスライド上映等で繋ぎつつ、出演者ほぼ全員についてちゃんと紹介文を用意していて、お祭りをきっちり盛り上げていました。お見事。

 

当日出演したのは全部で7組。セットチェンジの間などに感想を軽くメモっていましたので、その一部を紹介しようと思います。

 

 

①松木恒秀グループ
松木恒秀(G), 野力奏一(Key,P), グレッグ・リー(B), 村上“ポンタ”秀一(Ds), 本多俊之(Sax), 和田アキラ(G)

オールドスタイルというか、非常にコンサバティブなフュージョン/クロスオーバーって感じ。30年前の録音と言われて聴かされたら信じちゃいそうです。異常にダサく聴こえたのは、音色の選択、特にキーボードの音色のせいなのかな。ある種の様式美なんでしょうが、個人的にはかなり苦手な音楽でした。本多俊之さんのカーブドソプラノのソロなんかは結構かっこよかったんですけどね…。

 

 

②ドリーム・セッション・パート1

鬼怒無月(G), 勝井祐二(Vn), 近藤等則(Electric Tp), 今堀恒雄(G), ナスノミツル(B), 中村達也(Ds)

こちらはゴリゴリのパワー系セッションで、まあ大好物ですよ。空間を鋭く切り裂きつつグイグイと押し広げていくような近藤等則さんの電化トランペットがクソカッコイイ。大ホールでも手を緩めることなく、破壊的・殺人的な音も繰り出していて感動しました。

 

 

大友良英スペシャル・ビックバンド
大友良英(G), 江藤直子(Pf), 近藤達郎(Key), 斉藤寛(Fl), 井上梨江(Cl), 鈴木広志(Sax), 江川良子(Sax), 東凉太(Sax), 佐藤秀徳(Tp), 今込治(Tb), 木村仁哉(Tuba), 大口俊輔(Acc), かわいしのぶ(B), 小林武文(Ds), 上原なな江(Per), 相川瞳(Per), Sachiko M(Sinewaves), ゲスト:太田惠資(Vn), 梅津和時(Sax)

新譜が出たばかりの大友さんのビックバンド。やったのはどれも新譜収録の曲で、少し短めにやってたかな。買ったばかりの新譜を聴いた時、管のソロが少ないのが物足りないかなと思ってたんですが、梅津和時さんのゲスト参加が良い感じでした。ラストの「ラジオのように」からあまちゃんのテーマ」に繋ぐメドレーも楽しくて良かったですが、エリック・ドルフィー「Stright Up and Down」渋さ知らズのダンドリ、あるいはブッチ・モリスのコンダクションみたいに、大友さんがその場で指示を出しながらやっていたのが面白かったです。

 

≪参考:ブッチ・モリスのコンダクション≫

これ生で観たら楽しいでしょうねー。

 

 

菊地成孔ダブ・セプテット
菊地成孔(Sax), 類家心平(Tp), 駒野逸美(Tb), 坪口“TZBO”昌恭(Pf), 鈴木正人(B), 本田珠也(Ds), パードン木村(Real time dub effects)

ここで司会の菊地さんのバンドが登場。ジョージ・ラッセル「The Lydiot」とかやってました。この日の出演バンドの中では、一番いわゆる"ジャズ"っぽい演奏だったかな。しかしこのバンド、音盤で聴いても生で観ても、ダブエンジニアの存在がイマイチ効果的に感じられないんですよね。かといって、ダブがなかったらただのバップだし…。類家心平さんのソロは素晴らしかったです。

 

 

佐藤允彦ソロ・ピアノ
佐藤允彦(Pf)

演奏内容的には、このプログラムがダントツで良かったと思います。最初に短く挨拶をして、その後20分間だけソロピアノをやったのですが、 いやはや凄まじい演奏でした。MCで「冒頭だけ作曲してある」というようなことをおっしゃっていましたが、大部分は即興演奏。そこで紡がれる音のすべてに必然性と確信があるように聴こえました。初めてジャズ喫茶でセシル・テイラー『Indent』を聴いた時に匹敵する衝撃と感動がありました。

 

≪参考:セシル・テイラー『Indent』≫


Cecil Taylor, Solo Piano, INDENT part 1 of 2

 

 

⑥鈴木勲スペシャル・セッション
鈴木勲(B), 板橋文夫(Pf), 井野信義(B), 本田珠也(Ds), ゲスト:ジョージ大塚(Ds), 渡辺香津美(G)

いつものオマさん。80代とは思えないスピード感で紫式部などをブリブリと弾いてました。相変わらずカッコイイ。演奏後半は渡辺香津美さん、ジョージ大塚さんとトリオで「Yesterday」。ジャズスタンダードではなく、ビートルズの方ですね。じっくり聴かせる良い演奏でした。

 

 

山下洋輔トリオ・リユニオン
山下洋輔(Pf), 中村誠一(Sax), 坂田明(Sax), 林栄一(Sax), 森山威男(Ds), 小山彰太(Ds)

これですよこれ、これを観たくて年末のクソ忙しい時に7000円も払って新宿文化センターまで行ったんです。演奏が始まる前にコルトレーン来日公演時の相倉久人さんの司会の音声が流され、菊地さんがその紹介文をもじって呼び込んだんですが、最初に出てきたのが中村誠一さん、森山威男さんの第1期山下トリオ。演奏したのは「ミナのセカンドテーマ」!続いて坂田明さん、森山さんの第2期トリオで「キアズマ」!さらに坂田さん、小山彰太さんの第3期トリオで「ゴースト」!さらにさらに、林栄一さん、小山さんと「ストロベリー・チューン」!最後は全員登場で「グガン」!もうこれは内容がどうこうではなく、山下トリオのファンサービスてんこ盛り、トッピング全部乗せみたいな演奏(もちろん、内容的にも「ストロベリー・チューン」での林さんの無伴奏ソロとか素晴らしかったんですが)。祭りの最後を締めくくるに相応しく、客席も大盛り上がりでした。

 


Yosuke Yamashita Trio - Ghost

初めて山下トリオの音楽にハマったのがこの『モントルーアフターグロウ』でした。目の前でこの演奏が再現された時(坂田さんの絶叫もありました)、興奮と感動で思わず涙が…。

 

 

大きなホールでのコンサートですし、直前にチケットを買ったために良い席が残っていなかったこともあって音響的にはかなりイマイチだったんですが、とても楽しいお祭りでした。20年以上西武新宿線沿線に住んでいたり、高校時代に寺山修司から新宿アングラ文化に憧れを持ったことがあったり、ユニオンを始めとするレコード店や書店や映画館に散々お金を落としていたり、その他色んな理由で新宿という街には特別な思いがあるんですが、その中でもピットインというのは特別な場所です。これからも可能な限り通い続けるでしょうし、「ジャズの殿堂」としてのピットインがますます発展・進化していくことに期待しています。

しかし、満席だとしたら1800人、少なくとも1000人以上はいたであろうお客さんのどれだけが日常的にライブに足を運んでるんだろうとも思ってしまいました(ちなみに、司会の菊地さんが「○○代の人拍手!」とお客さんに拍手をさせて年齢調査?をした場面があったんですが、50代以上がかなり多かったです)。吉祥寺foxholeのように閉じてしまったお店もありますが、今の東京はライブハウスが多すぎるくらいに多くて、私の行動範囲だけでも西荻窪アケタの店荻窪ベルベットサン、入谷なってるハウス、西麻布スーパーデラックス、関内エアジン、早稲田茶箱、稲毛キャンディ、国立ノートランクスなどなどで日々素晴らしい演奏を観ることができます。でも、集客が演奏内容の素晴らしさに見合ってなくてもったいないと思うことが本当に多いんですよね。ホールよりはるかに良い音で聴けますので、特に首都圏在住の方にはライブ会場に足を運ぶことをおススメします。

最後ちょっとグチっぽくなっちゃいましたが、とにかくピットイン50周年おめでとうございます!!ピットイン関係者の皆さん、ほんと感謝してます。直近では12月31日の毎年恒例年越しライブも予約済みですし、末永くお世話になりたいと思っていますので、今後とももよろしくお願いします!!

 

 

 

新宿ピットインの50年

新宿ピットインの50年

 

50周年記念本、会場の物販で購入しました。ピットインオーナーによる出演ミュージシャンへのインタビュー(『季刊・アナログ』という雑誌に連載されていたもののようです)、毎月のスケジュール表に載っているミュージシャンのエッセイ、 渡辺貞夫×坂田明etc.の対談などが収録されていて、充実の内容。インタビュー以外は大体目を通しましたが、めちゃくちゃ面白いです。

 

 

大友良英SPECIAL BIG BAND LIVE AT SHINJUKU PIT INN 新宿ピットイン50周年記念

大友良英SPECIAL BIG BAND LIVE AT SHINJUKU PIT INN 新宿ピットイン50周年記念

 

ピットインのレーベルから出た、50周年記念のライブアルバム。ドルフィーの曲を3曲やっていて、その中でも「Gazzelloni」がカッコイイ。

 

 

日本フリージャズ史

日本フリージャズ史

 

このフェスでの大友良英スペシャルビッグバンドの1曲目「Song for Che ~ Reducing Agent」は、本書の著者である副島輝人さんに捧げられました。日本フリージャズファンには必読のドキュメント、伝説、神話の数々。