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たぶん思ったことあんまりまちがってない

ジャズ アルバム紹介やライブの感想など 

2016年間ベスト

年間ベスト

ブログを放置すること4か月、もう2017年になってしまいましたが、2016年の「年間ベスト」をまとめておきます。2016年に聴いた作品の中から、特に印象に残ったものを計13枚選びました。毎年そうなんですが、分母の数が大したことないですし、順位は付けません。アルバムタイトルをクリックするとbandcampやdiscogsに飛びますので、気になったものがあればぜひチェックしてみてください。

 

 

 

≪国外新譜≫

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Steve Lehman  Sélébéyone

超ドープなトラックの上に乗るラップ(=肉声)とアルトサックス(="身体器官の延長としての管楽器"から発せられる音)。ジャズとヒップホップの地縁・血縁関係。この作品の出来自体も素晴らしいけれど、この作品をきっかけに色々と論じることが可能という点でも、2016年を象徴する大傑作ではないかと。

 

 

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Michael Foster, Leila Bordreuil  The Caustic Ballads

JOEさんの記事で知って即購入。サックスもチェロも特殊な奏法を駆使するタイプの即興デュオ。しかし拡張された技術を並べ立てるだけに終わっていないところが◎。サックスをスースーカチャカチャ鳴らす系の即興は聴きすぎて食傷気味な感がある(「ああ、このパターンね…」と思ってしまう)んですが、これは音それ自体の説得力が高いし、展開が多彩でとても面白いです。

 

 

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The DKV Thing Trio  Collider

ケン・ヴァンダーマーク、(エリック・ドルフィーを除けば)1番好きと言って良いくらい好きなミュージシャンなんですが、ここ最近は以前ほど熱心に追いかけることもなくなってきています。それでも新作を聴くとやっぱり興奮してしまって。"ミニマルパワー系フリージャズ"の頂点に君臨するヴァンダーマークとマッツ・グスタフソンのダブルトリオであるこの盤、事前の予想を超える新しいものは特に出て来なかったのですが、やっぱりこういうの、どうしようもなく好きなんです。

 

 

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John Butcher, Thomas Lehn, Matthew Shipp  Tangle

何と言ってもマシュー・シップの凄み。「トーマス・レーンはいてもいなくても…」と少し感じてしまったくらいにシップが強い。(フリー)ジャズの強力な磁場を発生させ、そこにジョン・ブッチャーを引きずり込んでいるようなイメージ。ブッチャーは無伴奏ソロや頭のおかしい多重録音も素晴らしいけど、共演者によって色を変えるというか、内に秘めているものをガンガン引き出してくる感がありますね。

 

 

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Peter Evans  Lifeblood

これはもう圧倒的。トランペットという制限の多い楽器をここまで拡張できるものかと。しかしトランペットでなければ、ピーター・エヴァンスでなければ出せない音がみっちり詰まっています。これまでエヴァンスが数々の作品で示してきた「ジャズ」への特有のアプローチの集大成を見ることができるようにも思います。これがライブ録音というのも本当にヤバい。早く日本に来てくれー!

 

 

≪国内新譜≫

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後藤篤カルテット  Free Size

数年前に新宿ピットイン昼の部で観て以来、CDを出してくれるのを待ち続けていました。演奏はもちろん、林栄一ガトスミーティングや板橋文夫オーケストラでも演奏されているGrand Openなど、作曲も素晴らしいです。録音は"西荻のルディ・ヴァン・ゲルダー"ことアケタの島田さん。安心と信頼の「中央線ジャズ」感ですが、決して生温い内容にはなっていません。むしろめちゃくちゃアツい。作曲でもその才を発揮している石田幹雄さんの存在が良い刺激を与えています。

 

 

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福原千鶴  文の鼓

秘宝感や大群青、坂田明平家物語」への参加などで個人的に馴染み深い福原千鶴さんの1stアルバム。スガダイロー小田朋美etc.多彩なゲストを迎えて鼓、歌、朗読など盛り沢山の内容なんですが、佐藤允彦×八木重吉の2曲がどうしようもなくツボ。一時期こればっかり聴いてました。

 

 

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渋谷毅、市野元彦、外山明  Childhood

7曲中5曲が市野元彦さんのオリジナルで、全体的に市野色が強い……かと思いきや、熟練の3人がそれぞれ個性を色濃く出しながら、不思議な統一感と自由さを醸し出しています。御年77歳(!)の渋谷毅さん、もはや仙人のような出で立ちで、ライブのMCも飄々としてますが、その牙はいまだ捥がれていません。アルバム最後のFolk Song、渋谷さんのスタイルにばっちりハマった名曲・名演だと思います。

 

 

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川下直広カルテット  初戀

選曲からしてもう最高。First Song不屈の民!!そしてThings Have Got To Change!!!私のストライクゾーンど真ん中です。シンプルだけど決してありきたりではない、「ストレート・アヘッド」なジャズ。暑苦しい咆哮から哀愁あふれるバラードまで、全編に満ちる異常なまでの生々しさ。「無機質」という言葉からもっとも遠いところにあるのがこのアルバムではないかと。

 

 

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坂田明×岡野太  duo improvisation 

坂田明さんのアルトのスピード、キレ、コク。衰えを知らないどころか凄味が増しているのでは。自分は緻密に練り上げられたウェルメイドな作品よりも、こういう「気合い一発真っ向勝負」で身体性が前面に出たものにどうしようもなく惹かれてしまう性分でして。血が滾るのを止められないんですよ。

 

 

≪発掘盤etc.≫ 

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Charlie Haden, Liberation Music Orchestra – Time/Life (Song For The Whales And Other Beings)

生前のチャーリー・ヘイデンの演奏を含むLMO新作。ヘイデンが亡くなった後の曲はカーラ・ブレイ色が強く出ていて、過去作と併せて聴くことでLMOにとってのカーラの存在の大きさが良く分かるような気がします。ヘイデン没後の演奏は、カーラの近作と比べて特別優れているとは言えないようにも思いますが、LMOへの個人的な思い入れの強さやヘイデンの死による感傷を差し引いても、Blue In GreenSong for Whales(トニー・マラビーのソロ!)は快演だと思います。

 

 

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Pharoah Sanders, Hamid Drake, Adam Rudolph – Spirits

ファラオ・サンダースの絶叫・咆哮。これに尽きます。胡散臭さ満点のパーカッションやタブラが鳴り響く中、猛然と吠えまくるファラオ。暑苦しい!ヤバい!間違いない!咆哮パートはアルバム全体のごく一部なんですが、ここを聴くだけのためにでも買う価値はあると思います。ファラオのファンは必聴。

 

 

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David S. Ware & Matthew Shipp Duo – Live in Sant'Anna Arresi, 2004

2004年の発掘ライブ盤。どこを切り取っても「ウェアの音」としか言いようがない音が鳴っていて、初めて聴いたときは電車の中にもかかわらず涙ぐんでしまいました。これについては冷静なレビューは不可能。ありがとう、ウェア。ありがとう、Aum Fidelity。

 

 

≪総括≫

「豊作」という印象です。ここに挙げたもの以外でも愛聴している盤が結構ありますし、気になりつつ聴きそびれてしまったもの、買ったまま積んであるものも多数あります。しかし、こうして並べてみると相も変わらずジャズとかインプロばっかり聴いてるな…。

それと、今更かもしれませんが「bandcampやべえ」ってのが大きな感想ですね。なんと上に挙げた国外盤のほぼすべてがbandcampで試聴・購入可能です。ヴァンダーマークなんかも新作だけでなく、CDでは入手困難になっている旧作まで配信し始めていて、欲しいものが無限に転がっているのではないかと思うくらいです。

2016年はTwitterを始めたことでブログ更新頻度が激減した1年でもありました。ブログを書くためにまとまった時間を取ることが難しくなったというのもあるんですが、ちょっとした感想程度ならツイートするだけで済ませた方が楽になってしまって。備忘録のつもりで4~5年書いてきたこのブログ、やはりバックナンバーをたどりやすいといったメリットもありますので、アルバムレビューやライブの感想などちょこちょこ更新していきたいなと思っています。2017年も、お付き合いくださる方がいれば幸いです。

 

 

 


Eric Dolphy 1963 - God Bless The Child

2017年もみなさんに祝福がありますように。