たぶん思ったことあんまりまちがってない

ジャズ アルバム紹介やライブの感想など 

「ジャズ批評」の批評性?

書店に行く機会があったので、ちょっとジャズ誌を立ち読み。

 

ジャズ批評 2013年 03月号 [雑誌]

ジャズ批評 2013年 03月号 [雑誌]

まず手に取ったのが「ジャズ批評」。「マイ・ベスト・ジャズアルバム2012」というタイトルで、評論家やライター、ジャズ喫茶の店主、レコード店員などが2012年のベストアルバムを選出する特集。

「2012年のジャズシーンを振り返る」的な対談から始まるのですが、「私はこれが好き」と言っている以上のものは特になく。このブログで相倉本を取り上げた時にも書きましたが、今の時代、「ジャズシーンを総括する」的な試みは成立しにくいのではないでしょうか。取り上げていないものがあまりに多すぎるし、かと言って、取り上げられているものにそれを取り上げるべき必然性は感じられず。

「マイ・ベスト・アルバム」企画はかなりの人数紹介されていましたが、旧譜を挙げる人が多いのが気になりました。2012年のベストとして、いま「フォア・アンド・モア」やオーネットの「ゴールデンサークル」を挙げる意味って何なんでしょうか。旧譜でも、未発表音源が発掘されたとか、今まで軽視されていたけれども再評価すべきとか、そういった選出意図があるなら分かるのですが。小埜涼子「Undine」やJAZZ非常階段など、私が好きなものもいくつか挙がっていましたが、「この人とは趣味が合う」以上の感想は抱けませんでした。

その他の連載なども流し読みしましたが、うーん、「ジャズ批評」じゃなくて「ジャズ紹介」じゃないですかね、これ。中途半端な映画評のコーナーとか、存在意義・編集意図が分からないものも多数。厳しいことを言うようですが、単なる紹介的な情報発信に留まるならば、ソーシャルメディアを通じてレーベルやミュージシャンから直接情報を得られる今の時代に付いていけないのでは?今やyoutubeやレーベルのサイトで試聴もできてしまうわけで。

辛うじて面白くなりそうなのはエッセイ的なコーナーでしょうか。ただ、たくさん連載があるのに、それぞれの字数が少なくて読み応えに欠けます。たとえば、井上和洋さんの連載。今回はサン・ラ―を取り上げていましたが、バイオグラフィーでけっこうなスペースが埋まってしまっているのが非常にもったいない。「クラブ視点から」と言うコンセプトは良いと思うのですが、クラブカルチャーの中でサン・ラ―がどう受容されているのか、もっと踏み込んだ話を聞きたかったところ。

批判的な言葉を並べてしまいましたね。作るより批判することの方が簡単なので、製作に携わった方には申し訳ないのですが、まあ単なる一個人の感想ですので。面白そうだったら購入してじっくり読もうと思っていたのですが、「これで1260円って・・・」と思ってしまい、そっと書棚に戻したのでした。

 

サックス&ブラス・マガジン volume26 (CD付) (リットーミュージック・ムック)

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続いて手に取ったのがこれ。「偉人の肖像」というコーナーでエリック・ドルフィーを特集していて、執筆者が吉田隆一さん。こちらは分量もたっぷりで、素晴らしい内容でした。ドルフィーがどう「異常」なのか、丁寧かつ分かりやすく解説されていて、ドルフィーファンなら必読です。「ジャズ批評」にもこういう文章を期待したいのですが・・・。

『聴いたら危険!ジャズ入門』の時にも思いましたが、吉田さんの書く文章はやはり面白いですね。ロジカルでありながら、堅苦しくなくて読みやすいのです。今回は真面目なテーマでしたが、もっとはっちゃけたものも含めて、今後吉田さんの文章がたくさん読めるようになったらうれしいです。

 

JAZZ JAPAN Vol.31

JAZZ JAPAN Vol.31

文章が面白いミュージシャンと言えば、菊地成孔さん。今度来日するウェイン・ショーターについて書いていて、短めですがさすがの内容。パーカーやコルトレーンとの関係も交えつつ、「宗教家」としてショーター論をまとめていて、非常に刺激的。最近の菊地さんの音楽活動は私の好みに合わないが多いのですが、文筆家としての才能はジャズ界隈ではずば抜けているかと。こちらもおススメ。