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エンドレス・ワルツと渋さ

昨日は早稲田松竹で映画を見た後ピットインへ。

 

あの頃映画 「エンドレス・ワルツ」 [DVD]

あの頃映画 「エンドレス・ワルツ」 [DVD]

亡くなった若松考二監督が阿部薫鈴木いづみを描いた作品。劇映画としての出来は正直いまいちでした。だらだらと痴話喧嘩を見せられた挙句、オーバードーズ阿部薫が死去。後を追って鈴木いづみも自死するわけですが、その過程になんの説得力も感じませんでした。

ところで、昨年見た大林宣彦監督の『この空の花―長岡花火物語』はそれ以前、それ以後に見たすべての劇映画を相対化するほどのインパクトがありました。演技の不自然さ、違和感などをすべて強烈なエネルギーのうねりに転換し、月並みと思われがちな「反戦」というメッセージを観客の心にすっと置いていく、見事な手腕でした。完全にやられました。

 


大林宣彦監督作品 映画「この空の花」 予告編 120秒バージョン

 

そんな『この空の花』の映画体験の後では、『エンドレス・ワルツ』は物足りないと感じてしまったわけです。鈴木いづみがなぜ阿部薫という男を愛し、また死んだのか、「〇〇だからこうなった」という論理的な整合性や合理性がないこと自体は別にかまわないのですが、パワー押しでも何でも良いので観客を納得させる何かが必要だったのではないでしょうか。若松作品特有のエネルギーの爆発みたいなものがあれば面白くなった題材だとは思うのですが・・・。

一応見どころを挙げておくと、『エンドレス・ワルツ』の中では町田町蔵演じる阿部薫の演奏シーンだけでなく、不失者とフェダインのライブシーンがあり、それはなかなか面白かったです。不失者を聴くのは高校生の頃以来だったのですが、「あれ?こんなにかっこよかったっけ?」とか思ってしまいました。この映画が撮影された90年代当時のアケタの店や曼荼羅も見ることができるし、なんとジャズ評論家である副島輝人さんの演技が見られます!ただちらっとカメオ出演しているのではなく、短いながらもちゃんとセリフがあるという・・・。好事家の方は必見か?(笑)

 

 

そして、ピットインでの隔月例渋さ。

2013年2月1日(金)渋さ知らズオーケストラ@ピットイン

磯部潤/山本直樹/立花秀輝/山口コーイチ/佐藤帆/山田あずさ/池澤龍作/小埜涼子/中村江里花/すがこ/小林真理子/若林淳/宝子/鬼頭哲/北陽一郎/東洋/高橋保行/辰巳光英/ヒゴヒロシ/不破大輔

 

小埜涼子さんの参加が嬉しい。しょっぱなからぶっ飛ばしてましたし、今回は前回12月以上にソロのスペースが多くて大満足。循環呼吸含めバリバリ吹きまくっていました。小埜さんのtwitterによると帰りのバスの時間とのことで、サックスを吹きながら途中退場されていましたが、激かっこよかった。

そして、ピットインでは久し振りなんじゃないでしょうか、片山広明御大!まあ色々好き放題に暴れておられましたが(笑)、久々にばっちり演奏を聴けて嬉しかった。中村江里花さんとのバトル(・・なのか?あれは)が最高。ハッピーバースデーから、アイラーのゴースト、セントトーマスも飛び出し、めちゃくちゃ笑いました。若干グダグダしてたりもしましたが、祭り・宴会としては最高に楽しかったので無問題。

 

『エンドレス・ワルツ』のことも含め、東京ポッド許可局という芸人さんのやっているポッドキャストで、芸に関して「”上手さ”と”強さ”は違う」という話をされていたのを思い出しました。『エンドレス・ワルツ』に決定的に欠けていたのは、撮影手法や脚本、音響などについての「上手さ」ではなく、「強さ」の方でしょう。これに対して、渋さは(特にライブだと)グダグダしていても圧倒的に「強い」と思うのです。コンテンポラリージャズにおいて「上手いけど面白くない」というものがけっこうあると思うのですが、私は「強さ」を感じるものの方が好きですね。アーチー・シェップも、ジュゼッピ・ローガンも、ロン・カーターも、上手くなくて良いのです。「強い」から。特にジャズという形態においては「強さ」が大事なのでは、なんて思ったりしています。