Resonance Ensemble / Double Arc
2015秋のヴァンダーマーク祭り、開幕のお知らせ。
Alto Saxophone, Bass Clarinet – Mikołaj Trzaska
Alto Saxophone, Tenor Saxophone – Dave Rempis
Baritone Saxophone, Clarinet [Bb] – Ken Vandermark
Bass – Mark Tokar
Clarinet [Bb], Alto Clarinet – Wacław Zimpel
Drums – Michael Zerang, Tim Daisy
Electronics [LLoopp] – Christof Kurzmann
Trombone – Steve Swell
Trumpet – Magnus Broo
Tuba – Per-Åke Holmlander
先日吉田野乃子さんの新譜(大傑作)の記事でもグチをこぼしてしまったのですが、8月に注文したケン・ヴァンダーマークの新譜がなかなか届かず、ここしばらくずっとヤキモキしていました。それがようやく発送連絡が着まして、おそらくあと1週間もすれば、フォトブック+2CD『Site Specific』、PNLとのデュオ『Lions Have Eaten One of the Guards』、Fred Loberg-Holmとのデュオ『Resistance』がまとめて届く予定です。少し前にResonance Ensembleの新譜も届いてまして、これからしばらくは久々にヴァンダーマーク漬けの日々を送ることになりそうです。
このResonanceの新譜は、ゲストにChristof Kurzmannを迎えていて、不穏な電子音で始まりますが、まあ基本的にいつもと同じヴァンダーマークの中編成の感じです。激かっこいいリフと、色んな組み合わせのインプロ。作曲と即興が溶け合ったというか、即興が組み込まれた作曲というか。
ところで、最近リー・コニッツのインタビュー本(『リー・コニッツ ジャズ・インプロヴァイザーの軌跡』。クッソ面白いです。そのうち紹介記事書くかも。)を少しずつ読み進めているんですが、そこで語られている「即興」観が興味深いなと思っています。コニッツは「メロディをインプロヴァイズする」という言い方をしていて、彼にとっての「インプロ」というのは、ほとんど「メロディの変奏」に近いもののように思います。コニッツは事前にストックしておいたフレーズの引用(クリシェ)を強く否定しますが、ゼロからまったく新しいものを生み出せと言っているのではなく、メロディを深く理解した上で、その瞬間瞬間で創造的なプレーをすることを「インプロヴァイズする」と呼んでいるようです。このインプロ観は、クリシェからの脱却という点は共通していても、「メロディ」や「ジャズ」からも抜け出そうとしたデレク・ベイリーらのそれとは別物でしょう。
※こうしたコニッツの見方には、チャーリー・パーカー(と有象無象のフォロワー)の出現という時代状況が大きく影響しているのだと思いますが、その話はまた別の機会に。
さて、Resonance Ensembleに話を戻すと、このバンドでのヴァンダーマークの「作曲と即興」に対するアプローチは、上記の二者ともまた違っていて。しかし、これって実は新奇なものというわけではなくて、まっとうに(フリー)ジャズ的なアプローチを発展させた1つの結果のような気がするんです。多種多様なバンド/プロジェクトを率いるヴァンダーマークですが、根っこのところには大きく「ジャズ」があるのではないかと。そこが個人的にすごく好きなところだったりするわけです。
≪参考動画・音源≫
過去作の音源ですが、一応これも貼っておきます。
ジャズにおける「作曲と即興」、あるいは「自由」の観念については、エリントンやエレクトリック期のギルオケも参照すると面白いことが考えられそうな気がしています(加藤総夫さんが指摘した「エリントン・固定的なのに自由に感じられるのはなぜか問題」など)。現代ジャズの「アンサンブルの時代」(©村井康司)、「New Chapter」(©柳樂光隆)を語る上でも重要な視点だと思うので、誰かガッツリ批評書いてくれないかなー(他力本願)。