たぶん思ったことあんまりまちがってない

ジャズ アルバム紹介やライブの感想など 

2016春 梅津和時・プチ大仕事 100%シャクシャイン

1日経ってしまいましたが、感想をまとめて書いておきたいなと。

 

 

2016年3月2日(水)100%シャクシャイン@新宿ピットイン

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梅津和時(As, Ss)三好功郎(G)今堀恒雄(G)清水一登(P, Key)水野正敏(B)新井田耕造(Ds)ヤヒロトモヒロ(Per) アンコール時飛び入り:?(Per)

 

 

梅津和時さんのバンド、シャクシャインのライブを観てきました。シャクシャインは、1990年のアルバム『キネマ』をきっかけとして結成されたバンドで、90年代は梅津さんのレギュラーバンドとして毎月ピットインに出ていたそうです。「98年に解散」との記述も見かけますが、近年も時々ライブをしているようで、昨年もヒロトモヒロさん以外のメンバーが集まってピットインでやったとのこと。で、今回は結成当時のメンバーが全員参加したので「100%シャクシャイン」というわけ。

セットリストは以下の通り(記憶違い等あるかも)。

 

<1st>

・ヤキトリ

・歌舞音曲

・シーコ・メンデスの歌

シャクシャインの戦い

 

<2nd>

・アブラだアブラ

・タイスキ

・ローズ・デ・サハラ

・ナビゲーター・ブーガルー

 

<アンコール>

・ウェスタン・ピカロ

 

ラテン、アラブ、東南アジア、ウェスタン等がごちゃ混ぜになったスーパー多国籍・無国籍な音楽。今堀・三好ツインギターがバシバシとキメまくり、梅津さんのアルトもキレッキレで、いやーアツかった。ライブ盤『大雑把』は数年前から愛聴していましたが、生で観たらやっぱり興奮しちゃいました。パーカッションも入って結構分厚いサウンドになっているというか、色んな音が洪水状態で押し寄せてくるんですが、曲がしっかりしているし、演奏力も当然高いので、ぐっちゃぐちゃのカオスには陥らなくて(ライブ中のMCで、梅津「相変わらず全体的にゴシャッとしたまとまりのないサウンドで…」三好「え?そんなことないと思うけど」というやり取りをしていたのが印象的でした)。その上で、切れ味鋭い梅津さんのアルトが歌いまくり、踊りまくるんですから、こんなの楽しくないわけがないでしょう。

メンバーそれぞれが素晴らしい演奏を繰り広げていましたが、特に圧倒されたのは清水一登さんのピアノ&キーボード。久々に鍵盤のソロを聴いて鳥肌が立ちました。時に左手はピアノ、右手はキーボードのように使い分けながら、絶妙にズラしたヘンテコなフレーズを凄まじい勢いで弾きまくっていました。曲によって変えるキーボードの音色も面白くて、シャクシャインのサウンド全体の印象を大きく動かしていたと思います。

物販で持っていなかった『Desert in a Hand』(手焼きCD-R版)を買い、今も聴きながらこの記事を書いているんですが、これもまた面白いです。部分的にですが菊地成孔さんのdCprGを連想したり。そういえば、ライブ中には、ソプラノ循環呼吸でどんどん昇り詰める場面でDaniel Zamirを想起させられたりもしていました。シャクシャイン、90年代に活躍したバンドですが、今聴いても色んな意味で面白いと思います。梅津さん、老人になってもシャクシャインをやりたいというようなことをMCでおっしゃってましたので、またライブがあったらぜひ観に行きたいと思っています。

 

 

 

大雑把

大雑把

 

 

Desert in Hand

Desert in Hand

 

 

キネマ

キネマ

 

 

エクレクティシズム
 

 

 

 

佐藤允彦 / Randooga - Select Live Under the Sky '90

Twitterで感想を一言にまとめるだけの方が楽になってきましたが、佐藤允彦さんのことは一度ブログに書いておこうかと。

 

 

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佐藤允彦 Randooga - Select Live Under the Sky '90

佐藤允彦(key, comp, arr), Ray Anderson (tb), Wayne Shorter, 梅津和時, 峰厚介 (sax),  土方隆行 (g), 岡沢章 (b), Alex Acuna (dr), 高田みどり, Nana Vasconcellos (perc)

 

 

昨年の新宿ピットイン50周年フェスでのソロ演奏に圧倒され、「佐藤允彦作品ってちゃんと聴いたことないけど聴いてみたいな」と思ってディスコグラフィを調べてみたんですが、あまりに膨大な量でどこから聴くか決められず…。そこでid:joefreeさんにオススメを教えてもらって何枚か買いまして(Joeさんありがとうございました!)、その中の1枚がこれ。

90年のジャズフェス、ライブ・アンダー・ザ・スカイでの演奏。89年生まれの私には肌感覚が分からないんですが、当時はまだバブってたんでしょうか。Wikipediaの同フェスの項目を見ると、恐ろしいくらいに豪華な出演陣。77年から92年までやっていたそうで、ハンコック、ショーター、マイルスにギルオケ、オーネットやWSQ、サン・ラの名前まで。当然時代を反映してフュージョン系も多数で、チック・コリアクルセイダーズ、ガッド、ブレッカー等々の名前が並んでいます。このランドゥーガにも4人の海外ミュージシャンが参加しており、いずれも大物ですが、何といってもウェイン・ショーターの名前が目を引きます。日本勢も錚々たるメンツ。

 

一部ですが動画が。CDはフルで11分収録されてます。 

 

強靭なリズムセクション、民謡的なモチーフを用いた印象的なリフの上にご覧の豪華な管。ギターやキーボードの音色に「時代を感じるなー」と思うところもありますが、それでもなおカッコイイです。ショーターや梅津和時さんも当然すごいんですが、自由に、悠々と乗りこなす峰厚介さんのテナーが好きすぎる。ナナ・ヴァスコンセロスのボイスが加える謎エキゾ感も面白い。

民謡モチーフを取り入れたジャズって散々やりつくされている感もあって、(この言葉は好きではありませんが)いわゆる「和ジャズ」であるとか、有名どころだと秋吉敏子さん、最近では大友良英さんが盆踊りをやっていたり、板橋文夫オーケストラが民謡ユニット「結」と共演していたり。

 


金子友紀・「結 - yui 」 + 板オーケストラ - 相馬盆唄

昨年ライブで2回観ました。田村夏樹さんや小山彰太さんがいた頃も素晴らしかったですが、今の板橋オケはめちゃくちゃ面白いと思います。ぜひ生で観ることをオススメします。

 

中央線ジャズでも演歌や民謡の香りを漂わせるものは多いですよね。天才アケタの傑作『わっぺ』などなど、例を挙げれば枚挙に暇がありません。そう考えると、近年のエスニックな要素を前面に押し出したジャズのブームもさほど新しい現象ではないような気がしてますが、まあ、その話はまた別の機会に。

何はともあれ、このランドゥーガのライブ盤は、私が佐藤允彦さんに対して事前にもっていたイメージを覆すようなシンプルにカッコイイものでした。というのも、これまであまり佐藤さんの作品を聴いて来なかったのは、「なんか頭良さそうで苦手」という印象a.k.a.偏見があったからで。ソロピアノ作やインプロセッションものを聴くとやはり理知的な印象を受けるんですが、ランドゥーガは頭からっぽで聴いても十分楽しめるもので、佐藤允彦という音楽家の懐は広いんだなと。本当にアホかってほど大量に作品をリリースしていて、もちろん私の好みに合わないものもありそうですが、やはり偏見を排して色々聴いてみた方が人生楽しくなりそうだよなという当たり前のことを再確認しています。

 

 


Peter Brotzmann, Masahiko Satoh & Takeo Moriyama - Yatagarasu

いま現在の私の「好み」にバシッとハマるのは、やはりこういうやーつ。こんなの最高過ぎるでしょう。PNLとのデュオなんかも面白そうだなと思ってます。

 

Twitter始めてみました

記事タイトル通りなんですが、先日惜しくもニアミスしてしまったid:Joeさんに嗾けられ、Twitterアカウントを取得してみました。

 

 

 

↑今後はこんな感じでツイートの貼り付けもできるようになったわけです。

 

 

ただでさえ更新頻度の下がっている当ブログ、「ツイッターやり始めたら更新しなくなりそう」と思ってたんですが、やはりアカウント持ってることのメリットが大きいだろうと判断するに至りました。 

 

 

Twitter開始を後押しした、予想されるメリット≫

 

①ブログで知り合った方と連絡を取りやすい

以前id:yoroszさんとお会いした時は、一時的に当ブログのコメント欄にメアドを載せることで連絡が取れたんですが、おそらくツイッター上でやり取りした方が遥かに楽だったでしょう。ブログのプロフ欄にメアドを公開しようかと思ってた時期もありましたが、今後はツイッター使えば良いってことですね。

 

 

②ネット上での交流・軽い情報の発信が容易に

元々ブログはあまり交流に向いたツールではないと思っていましたが、「バックナンバーがたどりやすい」という理由でブログ形式にこだわっていました。なので、今後も音楽絡みでまとまった字数をかけて書きたいことは、ブログに書いていくつもりです。そして、これまで山ほどあった「ブログに書くほどではないがちょっと思ったこと」は、ツイッターで発信していこうかなと思っています。

 

↑これまでもユニオンのメンバーズシステムについては思うことが色々あったんですが、わざわざブログにまとめるほどのことでもないと思うので…。

 

 

③情報収集能力の向上

私が好んで聴いている音楽の多くは「マイナー」なもので(別にメジャー嫌いってわけでもないんですが)、雑誌等の媒体から情報を集めることはあまりできません。これまではミュージシャンやレーベルのサイト、色んな方のブログ等から情報収集してましたが、Twitterでしか発信されてない情報も多くありそうですよね。多少なりとも視野を広げてくれたら良いなと思っています。

 

 

そんなわけで今日の午後Twitterのアカウントを取得し、試しにちょこちょこイジってみましたが、もちろん使い方とかマナーとか諸々分かってません。ミスやら失礼があってもご容赦を。今後どう活用できるかも分かりませんが、もしお暇でしたらフォローしてくださればうれしいです。

 

 

Codona / Codona 3

論文・研究発表の締め切り地獄からひとまず解放されたので、久々にブログ更新(週2回くらいのペースで更新したいんですが忙しいとなかなか…)。

この1ヵ月くらいまともに音楽を聴けていなかった反動で、昨日は1日ジャズ漬けの幸せな時間を過ごしました。午前中に買い置いていた佐藤允彦作品(Joeさんにオススメしてもらったやつ)をまとめて聴き、午後は行きつけのジャズ喫茶Jazz Nuttyに。Nuttyは毎月「今月のテーマ」を決めていて、この2月は「トロンボーン特集」とのことだったので、家からSamuel Blaser『Solo Bone』を持ち込み、「Mood Indigo」(名演!)などをかけてもらいました。続けてマスターが管楽器無伴奏ソロつながりということでかけてくれたHamiet Bluiett『Birthright』に大いに感動しつつ、夜は入谷なってるハウス林栄一ガトスミーティングのライブ。いやー、最高の1日。

今日取り上げるのは、そんな幸せな日の帰りの電車で聴いて感銘を受けたアルバムです。

 

 

Codona 3

Codona 3

 

Collin Walcott — sitar, tabla, hammered dulcimer, sanza, voice

Don Cherry — trumpet, organ, doussn' gouni, voice

Naná Vasconcelos — percussion, berimbau, voice

 

 

ユニオンでドン・チェリーの名前を見て「安い」という理由のみで購入していたもの。ライブを観に行った日の帰りは音楽を聴かないことが多いんですが、「これならへヴィーじゃなさそう」と思って何気なく聴いてみました。最初にぼーっと数曲聴き流したときは、「ああ、この手のECM流エセ民族音楽か。まあ悪くないけど…」程度の感想。ECMによくあるキレイに整いすぎてるものってあんまり好みではないんですよね。エセ民族音楽なら胡散臭いやつとか適当なやつの方が好きで。

 


Pharoah Sanders Going to Africa

たとえばこういうの。これはもはや「エセ」ですらないかもしれませんが、(良い意味で)アホで楽しくて最高。

 

そんなわけで、本作を聴いて「ドン・チェリーと言えどもECMからリリースするものには"漂白感"が付いちゃうんだなー」とか思ってたんですが、謎のボイスを重ねる5曲目「Trayara Boia」あたりから「あれ、様子がおかしいぞ?」となり、最後の曲「Inner Organs」を聴いてビックリ。9分ちょっとの曲で、ずっとオルガンの持続音が鳴っている上に、途中からタブラも入りつつ、ボイスやらトランペットやらを重ねていく趣向なんですが、終電の中でiPodで聴いていたら軽くトリップしかけました。うわーやばいやばいやばいと思って、音量を上げてリピート。

 


Codona 3 - Inner Organs

 

「内臓」と「オルガン」をかけてるってことですかね。やってることはシンプルですがカッコイイ。正直他の曲はそこまででもないのですが、これだけ妙にツボにハマってしまいました。

このCodonaというグループ、気になって少し検索してみたら、Wikipedia「free jazz and world fusion group」とありました。いわゆる「フリージャズ」の要素はほとんどないような気がしますが、確かにこれは「ワールド・ミュージック」ではなく「ワールド・フュージョン」。色々ごちゃ混ぜにした結果、見事にヘンなものが生まれてますね。ECMから計3枚出しているようで、本作の他にも2枚あるとのことなので、ちょっと聴いてみたいと思ってます。

 

 

Codona Trilogy (Spkg)

Codona Trilogy (Spkg)

 

2009年に本作を含む3枚をまとめてリイシューしたもののようです。事前に知ってたらこの3枚セットの方を買いたかったんですが…。

 

川下直広&山崎弘一 / I Guess Everything Reminds You of Something

死ぬほど忙しくて当ブログも全然更新できずにいますが、最近買った旧譜で思いっきり好みのものに出会ったので簡単にご紹介しておきます。

 

 

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フェダインで知られるサックス奏者川下直広さんと、所謂「中央線ジャズ」のベテランベーシスト山崎弘一さんのデュオ作を聴きました。1997年録音。収録曲は以下の通り。

 

1. Africa #1
2. Yesterday
3. Pharaoh
4. Blue Moon
5. Besame Mucho
6. Alone Together
7. Africa #2
8. Come Sunday
9. Too Young
10. Now's The Time 

 

<参考動画>


「THAT'S ALL」山崎弘一 川下直広

 

文句なしの傑作。「Besame Mucho」なんかめちゃくちゃシンプルに、ストレートにやってますが、この2人にしか出せない"味"が濃厚で最高です。フェダインのような暑苦しくハードな演奏ではないけれど、ある種の泥臭さのようなものは共通していて。川下さんのサックスはアルバート・アイラーローランド・カークファラオ・サンダースの影響を強く感じさせるもので、息遣いやビブラートが強烈に生々しくてたまらんのですよ。山崎さんのぶっといベースも相性バッチリです。

選曲も良い。「Come Sunday」なんてこのデュオのスタイルに完璧にハマってます。個人的にアーチー・シェップホーレス・パーランのデュオとか、アイラーの『Goin' Home』みたいな「フリー系サックス奏者の黒人霊歌集」には目がないんですが、本作もそれに通じるものがありますね。無伴奏テナーの「Too Young」も沁みるなあ…。

 

本作は地底レコードからリリースされていますが、現在は廃盤になっているようです。実にもったいない。中央線界隈のジャズがお好きな方は、中古店等で見かけたらぜひ。ちなみに、私は行けませんが今月27日(水)に入谷のなってるハウスでこのデュオのライブがあるようです。川下さんの演奏は去年のフェダイン(一夜限りの?)再結成以来観に行けていないので久々に行きたいんですけど、論文の締め切りがががが…。

 

 

dCprG / Franz Kafka's South Amerika

この年末年始、色んな方の年間ベストをチェックしてました。ど腐れジャズファンの自分が大いに共感したのは、いつも拝読しているJoeさんのものはもちろん、Free Jazz Collectiveの「Albums of the Year 2015」、アメリカのラジオ局NPRの批評家投票など。で、各所で挙がっていたもので「気になっていたけど買い漏らしていたやつ」をいくつか買ったのですが、そんな中の1枚がこれ。

 

 

フランツ・カフカのサウスアメリカ

フランツ・カフカのサウスアメリカ

 

菊地成孔 坪口昌恭(Keys)小田朋美(Keys. Cho)大村孝佳(Gt.)アリガス(Bass)千住宗臣(Drums)田中教順(Drums)大儀見元(Per. Cho)津上研太(Sax)高井汐人(Sax)類家心平(Trumpet)

 

 

菊地成孔さんのdCprGの最新作。旧デートコースの頃、『アイアンマウンテン報告』『構造と力』なんかは割とよく聴いてたんですが、2010年の活動再開以後は興味を失ってました。インパルスからリリースされた前作、ラジオやyoutubeで聴いてもいまいちピンと来なかったんですよね。ところが、本作がyoroszさんの年間ベスト(異常なクオリティとクオンティティ!)に入っていたのを見て、「久々に聴いてみようかな」と思って購入。
合間合間に挟まれるポエトリーリーディング的なやつには全然ノれなかったんですが、それを除けばなかなか良い感じです。昔は「あれこれ言われるほどマイルスマイルスしてないのでは?」と思ってましたが、本作には『Get Up with It』『On the Corner』を連想させられる部分もあり。オルガン「ビャー!」でブレイクするのとか気持ち良いです。

 

 

多国籍・無国籍感も増し、ますますワケが分からん音楽になってますが、キャッチーさというかエンタメ性を失わないあたりはさすが。実は新宿ピットインの年越しライブで鈴木勲セッション(スガダイロー坂田明中村達也!)に菊地さんが飛び入りするという嬉しいハプニング(50周年記念コンサートのステージ上でオマさんが菊地さんに「今度一緒にやろう」と声をかけるという伏線あり)があったんですが、そこでも菊地さんのエンターテナーっぷりには舌を巻きました。豪腕揃いのセッションで、坂田さんが「ロンリーウーマン」を吹き始めたと思ったらゴリゴリのフリーに雪崩れ込んだりして脳汁出まくりだったんですが、そんな中で菊地さんがシレっとビートルズの「エリナー・リグビー」のフレーズ(たぶん)を吹き始めた時は思わず仰け反りました。最近サックス、特にテナーを吹く機会が減ってるのは本当に惜しい。サックスのインプロヴァイザーとしてめちゃくちゃすごい人だと思ってるんですが…。 

 

 

やや脱線しましたが、今のdCprG、ライブで観たらめちゃくちゃ楽しいでしょうね。スタンディングのライブは苦手だし、まず観に行くことはないだろうと思ってましたが、死ぬまでに1回くらいは行っておいた方が良いような気がしてきてます。

 

 

2015年ベスト

今年も1年を締めくくる儀式として、年間ベストをまとめておきたいと思います。ルールは1つだけ、「リーダー被りなし」。他は特に縛りもなく、順位も決めません。「今年はこれよく聴いたな」と思ったものを適当にあげます。アルバム名のところに試聴用の音源・動画等のリンクを貼りますので、興味をひかれた方はぜひ(ちょうど良い音源を見つけられなかったのもありますが…)。

 

 

①Jack Dejohnnette / Made in Chicago

Made in Chicago

Made in Chicago

 

 2015年は、AACM50周年という記念すべき年でした。そんな中、「AACMは死んでない!」ということをハッキリ示してくれた老人たちに心からの拍手を。このアルバムのロスコー・ミッチェル、最高です。

 

 

②Matana Roberts / Coin Coin Chapter Three: River  Run Thee

Coin Coin Chapter Three: River

Coin Coin Chapter Three: River

 

当ブログがプッシュし続けているMatana Roberts、2015年もやってくれました。全12章を予定しているCoin Coinプロジェクト、毎回スタイルを変え、聴き手を驚かせてくれます。今のところ2章が1番好きというのは変わらないのですが、これもなかなかにとんでもない作品で、余裕の年間ベスト入りです。

 

 

③小埜涼子 / Alternate Flash Heads

Alternate Flash Heads

Alternate Flash Heads

 

ブログでは取り上げそびれましたが、今年も小埜涼子さんの演奏・作品はよく聴きました。キレッキレのアルトに爆音ドラム、全99曲で30分たらずという凄まじい作品。ランダム再生で毎回表情を変えるというアイディアも面白いんですが、小埜さんの作品はどれもコンセプト先行にならないのが素晴らしいです。林栄一さんとの『Beyond the Dual 2』も良かった。

 

 

④吉田野乃子 / Lotus

こちらも小埜さんと同じく、フレッシュで強烈なアイディアとそれを具体化する高い演奏技術に感服。文句なしの傑作です。そういえば今年は女性サックス奏者の活躍が印象深かったですね(纐纈雅代さん、Ingrid Laubrockの新作も良かった)。

 

 

⑤blacksheep / + -Beast-

+ -Beast-

+ -Beast-

 

吉田つながりで、吉田隆一さんのblacksheep。2年前にも3rdを年間ベストに選んでますが、これもやっぱり素晴らしかった。ジャケや同梱のブックレットのクオリティも半端ない。blacksheepはリリースを重ねるごとにアルバム毎のコンセプトが明確に打ち出されるようになってきている気がします。今後の展開にも大いに期待してます。

 

 

⑥Matthew Shipp / To Duke

To Duke

To Duke

 

 管楽器の入っていないものはあまり聴かないのですが、これは久々にピアノトリオで「やられた!」と思う作品でした。エリントン・トリビュート作って掃いて捨てるほどあるわけですが、エリントンへのリスペクトを示しつつ自分の音楽をきちんと提示できているものに出会うとうれしくなりますね。エリントン・ファンに全力でオススメします。

 

 

⑦Chris Pitsiokos / Gordian Twine

Gordian Twine

Gordian Twine

 

今年はこの人の印象が鮮烈でした。90年生まれなのでまだ若いですが、とんでもない才能の持ち主。切れ味鋭いアルトが魅力で、今年聴いた彼の作品はどれも面白かったのですが、とりあえず1枚選ぶならこれかな。「フリージャズ」にまだフレッシュさを持ち込むことが可能だと言うことを示してくれました。

 

 

⑧Jim O'rourke  / Simple Songs

Simple Songs

Simple Songs

 

ピッツィオコスのアルバムをディスクユニオンの通販で買うとき、送料を無料にするための帳尻あわせで買った(5000円以上買うと送料無料)んですが、いやはや傑作でした。丁寧に作り込まれているのにシンプルで、これまでのジムさんの作品にはちょっと珍しいタイプの盛り上がりもあったり(「Hotel Blue」の高揚感!)。「何か歌ものでも聴こうかな」って気分になった時にまず手が伸びる作品でした。草月ホールの2Daysに行けなかったことが本当に悔やまれます。

 

 

⑨Virginia Gentaほか / Det Kritiske Punkt

Det Kritiske Punkt [12 inch Analog]

Det Kritiske Punkt [12 inch Analog]

 

長らく入手できていなかったVirginia Gentaのアナログ盤が手元にあるってだけでうれしいです。 ゴリゴリでバッキバキのフリージャズ/ノイズ。鈍重になっていないのがポイント高くて、私にはある種のヒーリングミュージックとして機能します。Chris Corsanoとのデュオのライブ盤が欲しいんですが、CorsanoのHPを見ると「Sold Out」になってるんですよね。デジタルで良いから再販して欲しい…。

 

 

⑩Daniel Zamir / Redemption Songs 

Redemption Songs

Redemption Songs

 

2015年、新譜・旧譜を問わず回数的にもっとも聴いた作品は、Daniel Zamirの『One』でした。前から存在は知っていて気になってたんですが、1枚も聴いたことなかったんですよね。彼の来日ライブの情報が流れた頃、id:joefreeさんとid:yoroszさんのブログ記事に背中を押されて『One』を購入。いやー、これはめっちゃくちゃ聴きました。それはもう延々と繰り返されるザミールのフレーズくらいしつこく聴きました。シンプルで美しいメロディと、どこまでも高く高く飛翔するようなソプラノが尋常じゃない中毒性で、脱法ドラッグならぬ「完全合法ドラッグ」ですね、これは。

で、当然他の作品も聴きたくなり、とりあえず新譜と旧譜をあわせて6枚買いました。Joeさんが記事を書かれていて、私もほとんど同じ感想しか浮かばなかったので自分のブログでは取り上げませんでしたが、新譜の中ではこの『Redemption Songs』が一番気に入りました。来日ライブはダウトミュージック10周年記念祭りと被ってたので行かなかったんですが、いつか生で観たいですね。

 

 

<総評>

昨年、一昨年と年間ベストは5枚に絞っていて、今年もそうしようと思っていたんですが、「これは外せない!」というのが結構あって、結果的に10枚になっちゃいました。挙げなかったものでは、Mary Halvorsonの諸作も良かったし、Ken VandermarkMars Williamsらシカゴ勢にも相変わらず魅了されっぱなしでした。内橋和久+広瀬淳二『saxophonedaxophone 』等、10周年を迎えたダウトミュージックの諸作も印象深かったです。

それと、今年は例年よりもいわゆる「コンテンポラリージャズ」を多く聴きました。自分では関心の埒外に置いていたJohn EscreetDavid Binneyをyoroszさんの勧めで聴いところ、これがなかなか良くて。そこそこジャズを聴くようになってから、「自分の好みはこういうやつ」というのが分かってきて、興味の幅が狭まってしまっていたなと反省しました。「聴いてみたらやっぱり自分の好みじゃなかった」というのはあって当然ですが、余計な先入観で入口を閉ざしてしまってはいかんなと。

各所の年間ベストでやたら取り上げられているKamasi Washington『The Epic』なんかもちゃんと購入して聴きました(話題作は一応チェックするんですが、youtubesoundcloudの試聴で満足してしまうことも多くて…)。カマシに関しては、「絶対マジメで良い人(アーサー・ブライス好きに悪い人はいません)だが、The Epicというアルバム単位では突出したところが少なく物足りない」というのが今のところの私の評価です。

その他の話題作では、Tigran Hamasyan『Mockroot』が意外と面白かったです。「メタルとかプログレ好きに人気ありそう」と思って「ティグラン・ハマシアン メタル」でググってみたらスウェーデンのバンドMeshuggahの名前が出てきて、「ああ、なるほど」と(同じくMeshuggahに強い影響を受けた日本のバンド、kamomekamomeの2ndを引っ張り出してきて懐かしい気分に浸ったりしちゃいました)。カマシが良くも悪くもまっとうに「ジャズ」をやっていたのに対し、ティグランはジャズ、メタル、民族音楽等を等価に扱ってごちゃ混ぜにした感じ。ジャズって古くから様々な音楽を取り込んできたわけですが、その多くはジャズ畑の人が他ジャンルの音楽をジャズの話法(たとえば"スウィング"。強烈にスウィングするエリントンの「くるみ割り人形」を参照)で消化するものだったのではないでしょうか。その意味で、”ジャズ目線”で見るとティグランは新世代感ありますが、本人に「ジャズミュージシャン」という意識がないのであれば、彼の音楽をジャズと括る必要はないし、括らない方が多くの人に届くような気がします。

 

…無駄に総評が長くなってしまいました。今年は新譜も旧譜も聴くのが追い付かないくらい面白いものがたくさん入手できてうれしい限りです。ほとんど備忘録として書いているこのブログに足を運んでくださったすべての方、とりわけ直接お会いしてお話ししてくださったyoroszさん、吉田隆一さんに心から感謝します。また、めでたくブログ10周年を迎えられたJoeさんにも特別な感謝を。いつも的確で、刺激的で、それでいて冗長にならないレビュー、最高です。

さて、そろそろシャワーを浴びて毎年恒例新宿ピットインの年越しライブに向かいます。宇宙一好きなバンド、渋谷毅オーケストラを聴かないと1年締めくくれませんから。このブログ、来年も細々と続けていくつもりですので、またお付き合いいただければ幸いです。

 

 


Eric Dolphy At The Five Spot - God Bless The Child

2016年もみなさんに祝福がありますように。