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たぶん思ったことあんまりまちがってない

ジャズ アルバム紹介やライブの感想など 

アンディ・ハミルトン『リー・コニッツ ジャズ・インプロヴァイザーの軌跡』(2015年 DU BOOKS)

ようやく読了。

 

 

リー・コニッツ ジャズ・インプロヴァイザーの軌跡

リー・コニッツ ジャズ・インプロヴァイザーの軌跡

 

 

 

リー・コニッツのインタビュー本を読みました。注や年表も入れると約500頁にもなる大著。その大半を占めるのが、数年にわたる著者とコニッツの対談です。そして、その合間にはコニッツに関するミュージシャン等へのインタビューが挿入されていて、その数は約40にも上ります。このインタビューはどれも短いものですが、メンツがすさまじい。ビリー・バウアーサル・モスカといったトリスターノ・スクールの面々に加え、ロリンズオーネットらジャズ・ジャイアンツ、デイヴ・リーブマンジョン・チカイエヴァン・パーカーまで!

正直に告白すると、私はコニッツの熱心なファンではありません。リーダー作は10枚くらいしか持ってないですね。たまに聴くと良いなと思うんですが、どうにもあの独特の音色が好みではなくて。愛聴盤と呼べるのは、↓これくらいかな。

 

I Concentrate on You

I Concentrate on You

 

レッド・ミッチェルとのデュオで、コール・ポーター集。たまにこういうのがあるからスティープル・チェイスもあなどれません。

 

あとはギル・エヴァンスとのデュオをたまに聴く程度。そんな非コニッツファンの私が読んでも、この本はめちゃくそ面白かったのです。かなりのボリュームですから、当然色んな話が出てくるわけですが、面白いと思ったポイントをざっくりまとめてみます。

 


ポイント①:コニッツのぶっちゃけ方
気に入らないミュージシャン(演奏)に対して容赦なくガンガン毒を吐いてます。自身のドラッグの使用歴についても、冗談交じりとは言え、まったく隠そうとしないぶっちゃけっぷり。チック・コリアに誘われてサイエントロジーにコミットしていた時期があったけど、金がかかりすぎるからやめたなんて話も。
20世紀のジャズジャイアンツの神話として、読み応え十分です。

 

 

ポイント②:コニッツのジャズ観
全編を通して見られるのが、コニッツの「メロディ」に対する執着です。ロリンズが「色々な曲に手を出す」ことに対して批判しているところがあるのですが、コニッツってAll the Things You Are等を延々と、執拗と言えるほどに演奏し続けてますよね。セシル・テイラーを聴いて、「しばらくの間はとても魅力的なんだよ、だけど伝統的な方法による何らかの形式とか、もっとメロディックインタープレイがぜひとも欲しいね」なんて言葉も(p.305)。
そして、少し意外だったのは、コニッツが他のミュージシャンを評するときに、「スウィング」「リラックス」という言葉を多用していることでした。
結局のところ、コニッツにとって重要なのは、リラックスしたリズムの上でメロディをインプロヴァイズすることであって、基本的には「スウィングしなけりゃ意味ない」のです。コニッツを「硬派なインプロヴァイザー」と括ってしまうのは短絡的に過ぎるのだなと気づかされました。

 

 

ポイント③:他のミュージシャンのコニッツ評
まあ当然のことなのですが、インタビューを受けた人の大半がコニッツを絶賛しています。異口同音に、コニッツがいかに独創的であったかということを語り、パーカーのエピゴーネンだらけの状況でコニッツが登場したときの衝撃や、コニッツに対する「クール」というレッテルが誤りであること、コニッツが正当に評価されていないことなどが述べられています。その中で興味深い分析を行っているのが、ガンサー・シュラーデイヴ・リーブマンポール・ブレイなど。サックスの奏法におけるパーカーからの影響、トリスターノとの異同などについて、普通のジャズ史本では踏み込めないところまで語っています。これはすごい。

 


そのほかにも、コニッツが「フュージョンもやってみたかったけど誰も呼んでくれなかった」なんて言っていたり、面白いところはまだまだあるので、ジャズファンには超おススメです。原著は2007年にミシガン大学出版局から出ているのですが、これを翻訳・出版した翻訳者とディスクユニオンブックスに感謝。今の日本でコニッツがどれくらい人気があるのか全然分からないんですが(私の通っているジャズ喫茶のマスターは「うちのお客さんでもコニッツ好きだって人はあんまりいないよ」って言ってました)、出版不況の中これを出した勇気は賞賛に値すると思います。拍手。

 

次はジョージ・ルイスのAACM本を出してくれないかなー(ボソッ