2016年4月10日 エヴァン・パーカー@稲毛CANDY
この体験をどう言葉にしたものか…。
2016年4月10日(日)エヴァン・パーカー@稲毛CANDY
Evan Parker (Ss, Ts)
実のところ、私は日常的にエヴァン・パーカーの録音を聴きまくっている熱心なファンというわけではなく、彼がアホかと思うほど大量に出している作品のうちのごく一部しか聴いていません。しかし、去年草月ホールで観た演奏、とりわけトリオからソプラノソロに移行する瞬間の空気の変化がどうにも忘れられず、今度はソロでガッツリ観たいと思いまして、約2時間かけて稲毛のジャズ喫茶キャンディまで足を運んできました。
<1stセット>
ソプラノサックスソロを25分ほど。「これぞエヴァン」という、循環呼吸とマルチフォニックスを巧みに用いたノンストップの即興演奏。客席1番前、手が届きそうなほど近くで堪能しました。これがCD等で聴いていた通りの凄まじい演奏だったのですが、実際に目の前で聴いてみて思い浮かんだのは「グルーヴ」という言葉。ミニマル・ミュージック的に少しずつ出音が変化していくことに伴う大きなグルーヴと、重音の低音部分をリズミカルに鳴らすことで生まれるグルーヴが合わさって、非常に大きなうねりを生み出しているように感じました。さらに、生の高音が左右の鼓膜をビリビリと揺らし、ずっと耳の奥を左右交互に撫でられているような感覚も。じっと聴いているうちに時間の感覚も変容・崩壊してきて、魔法にかけられたような気分でした。
<2ndセット>
15~20分ほどの休憩を挟んだ後に2ndセット。テナーで1本、ソプラノで1本、短めの即興演奏を計2本やってくれました。テナーの前半は循環呼吸を用いず、フレーズ感のある演奏。生で聴くテナーの音色は柔らかく、ある種ブルージーにすら感じられました。後半は得意の循環呼吸・マルチフォニックスが飛び出し、こちらではダーティーなトーンも。これがまたかっこよかった。最後はソプラノソロで〆。Sightsongさんが「鳥の歌声」と的確にたとえられていますが、どこまでも透き通った天上の音楽のように聴こえ、陶然としてしまいました。完全に心を持っていかれました。
終演後はミーハー心を発揮して、エヴァンにサインをお願いしました。ものすごく集中した演奏を終えた直後なのに、「(サインを書く前に)ちょっとビール一口飲ませて」「これ君のペン?いいペンだね」なんて冗談めかして応えてくれて感激。
サインをミュージシャンにお願いしたのはほとんど初めて(Twitterでは「生まれて初めて」と書きましたが、よく考えたら一度だけオルケスタ・リブレのインストアライブ&サイン会に参加したことが)。
数年来ブログを読ませていただいていて、先日Twitterで直接知り合った@Sightsongsさんと稲毛でラーメンを食べ、ジャズ談義などしつつ帰宅。いやー、久々に充実した日を過ごしました。
今回のツアーのオーガナイザーやCANDY等の関係者の方々に心から感謝します。こんなライブを日本で、しかも間近で観ることができて本当に良かったです。また別の編成でも観てみたいですし、そう遠くない未来に再来日してくれることを期待しています。
<参考動画>
Evan Parker - St Michael And All Angels, Chiswick, London, 11 October 2001
Evan Parker - Solo Tenor Improvisation at The Kernel Brewery, London
<お気に入りのエヴァン・パーカー参加作>
家を出るとき、どの盤にサインをもらうか決めかねて、リュックに4枚詰めていきました。結局、上記写真のように『Lines Burnt In Light』にサインしてもらったんですが、そのほかの候補3枚をついでにご紹介。
比較的初期(1978年)のソプラノソロ。タイトルとシンプルなジャケに惹かれて選びました。
ピーター・エヴァンス、サム・プルータ、クレイグ・テイボーンとのカルテット。このメンバー、編成で面白くならないわけがないと思って買ったら、これが期待通りの傑作。
以前JOEさんに教えていただいたもの。2004年録音のECM作。エヴァン・パーカー×ロスコ―・ミッチェル×ラージアンサンブルという凄まじい企画で、クレイグ・テイボーンやバリー・ガイ、ポール・リットンも参加。大編成からエヴァンのソプラノが出てくる瞬間、猛烈に興奮します。