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たぶん思ったことあんまりまちがってない

ジャズ アルバム紹介やライブの感想など 

Steve Lehman / Sélébéyone

めちゃくそカッコイイ。

 

 

Selebeyone

Selebeyone

 

Gaston Bandimic(vo:Wolof) HPrizm(vo:English) Steve Lehman(as) Maciek Lasserre(ss) Carlos Homs(p, key) Drew Gress(acb) Damion Reid(ds)

 

 

3か月も放置していたのでもはやブログの書き方も忘れてますが、この作品のレビューはもっとたくさん書かれるべきだろうと思いまして。スティーヴ・リーマンの新譜の感想を簡単にまとめておきます。

 

リーマンと言えば、私にとっては長らくCamouflage Trio等での激烈なアルトサックスが印象的な人だったのですが、彼はコロンビア大学で博士号を取得している知性派でもあり、近年は作曲と即興を極めて緻密に組み合わせたような作品群を発表して話題を呼んでいます。個人的には「頭良さそうな作品ばっかり作ってないで、もっとゴリゴリ吹いてくれよ!」と不満に思うこともなくはなかったのですが、一昨年に出た『Mise en Abîme』はあまりにかっこよく、私も「生意気言ってすんませんでした…。超カッコイイっす…。」と降参宣言したのでした。

 

 

 

そんなリーマンの新譜、なんとセネガル・ラップ入り。恥ずかしながら全然知らなかったのですが、セネガルのラップシーンというのは独自の発展を遂げており、かなり盛り上がっているようです。また、リーマンのコロンビア大学時代の師の1人はトリスタン・ミュライユという現代音楽の作曲家で、本作にはミュライユらスペクトル楽派の手法も取り入れられているそうな。・・・なんだか要素が多すぎて訳分からんですが、なにはともあれ↓の試聴音源を聴いてみてください。

 

 

私が本作を聴いて最初に思ったのは、「ヒップホップとしてくっそかっけえ!!」ということでした。リーマンがアルトサックス奏者/ジャズミュージシャンであると思って聴くと別の感じ方になると思うのですが(Twitterで交流を持たせてもらっているkenさんのブログ記事が大変興味深いです)、私の第一印象は超ドープなトラックの上にラップとサックスが乗っている、というものでした。

 

「ヒップホップとジャズ」と言えば、やはり最近はロバート・グラスパーらいわゆるJTNC系を想起せざるを得ないわけですが、リーマンのアプローチはそれとはまったく違うように見えます。Jazz The New Chapterが提示したのは、「ヒップホップetc.を自分のものとして消化してきたミュージシャンたちのやるジャズ」が見せる大きな広がり、という物語でした。グラスパーらのやっていることは、「ジャズ」としての面白みに欠ける旧来の「ジャジー・ヒップホップ」のようなものとは一線を画しているようであり、その意味では確かに新世代感があると思います。しかし、個人的にいまいちノリきれていないのは、「ラップが乗るビート」としてはあまり新鮮さを感じないというところだったりします。

 

たとえばこれ。 ポップで洗練されていますが。

 

これに対し、私はリーマンの本作を「現代ジャズ・現音etc.の要素をぶち込んだトラックにラップとサックスを乗せているもの」として受け取ったわけです。ここでは、身体器官の延長としてのアルトサックスから発せられる音が、生身の人間の肉声によるラップと並列に扱われているように思います。管楽器奏者がリーダーの作品であるにもかかわらず、管があまり前面に出ないミックスになっているのも、リーマンが意図的にそうしたのではないかと。

上述のkenさんのブログでは、

・ラップをバックにしたフリーっぽいアルト。

Steve Lehman: Sélébéyone (2016) 奇妙な味、が美味しかった - Kanazawa Jazz Days

と表現されていましたが、私は本作を聴いてラップとアルトの両方がトラックと見事に絡み合っていることに大興奮しました。奇しくもグラスパーの作品にも参加しているダミオン・リードの叩く頭おかしいとしか思えないドラムetc.によって構成される超トガったトラックが、アルトのソロが乗るものとしても、セネガル・ラップが乗るものとしてもばっちりハマっていて、なおかつ強烈に刺激的なのです。

やはりこれは「ジャジー・ヒップホップ」でも、「ヒップホップ以降のジャズ」でもなく、スティーヴ・リーマンにしか作り得なかった凄まじい作品と言うべきでしょう。単純バカなフリージャズ愛好家の私としては、吠えまくるリーマンが聴きたいという気持ちもやっぱり捨てきれないのですが、それにしてもこの作品にはやられました。またしても降参です。

 

本作には色んな要素がぶち込まれているので、まだまだ各方面から語れることがたくさんあるはずです。既にPitchfork等海外のサイトではレビューが結構アップされてますが、日本語で書かれたレビュー・感想をもっともっと読みたいなと思っています。