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白石民夫@新宿西口カリヨン橋

わずか20分。

 

 

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2016年6月3日・白石民夫@新宿西口カリヨン橋

白石民夫(As)

 

ちらほらと噂は耳にしていた白石民夫さんの路上演奏、ついに生で体験することができました。22時少し前にカリヨン橋に着くと、しゃがみこんで何やら準備をしている白石さんと10人ほどのギャラリーが。人通りが多い場所ではないものの、新宿の駅前ですから、通り過ぎていく歩行者はそれなりにいます。白石さんは見た目普通のおじさんですし、楽器をもっているので「これから何か演奏するんだろうな」って感じに見えたと思いますが、橋の片側に寄って演奏開始を待つ観客たちは何の集団なのか分からない有象無象感があり、なかなか異様な雰囲気でした。

そんなことを考えていると観客もだんだん増えていき、22時を少し過ぎたあたりで演奏が始まりました。キュルキュル、キーキーと高音を数分鳴らしては少し休む(リードやマウスピースを交換?)という、ただそれだけのことを20分ほど。当然、車や歩行者の会話の声といった色んな街の音が同時に聞こえてくるわけですが、そんな中で白石さんの出す音がひたすら夜の空に吸い込まれるように消えていきます。演奏が進む(?)につれてトーンの変化もあったりするのですが、一瞬前に鳴っていた音は二度と再現され得ないものであるということが強く感じられ、ベタですが"You can never capture it again"という例の言葉が頭を過ぎったり。

 


Last date- Miss ann.

 

演奏中、橋を通り過ぎていく人たちの反応も様々でした。いぶかしげな目線を向ける人。鼻で笑う人。スマホでぱっと写真を撮ってすぐ立ち去る人。観客のカメラに入らないように気を遣い、しゃがんで通り抜けていく人。一瞥もくれない人。思いがけない音にビクッとする人。

実のところ、私はいわゆるサウンドインスタレーションだとか、出音そのものとは関係ない要素の多いパフォーマンスの類には軽い苦手意識を持っていたりします。しかし、この白石民夫さんの路上演奏からは、通行人やギャラリーの反応も含めた「場」の空気を丸ごと体験することによって初めて生まれたのであろう「何か」をビシビシと感じて、なぜだか分かりませんが猛烈に感動してしまいました。

最終的に観客は20人以上、おそらく30人近く来てたと思います。動画を撮っている人も何人かいたようですが、あの空気感は絶対に生で体験すべきものだと思います。6月12日(日)22時から同じ場所で演奏するそうなので、興味のある方はぜひ。

 

 

<参考動画>


白石民夫/20150701/at新宿カリヨン橋

 

 

地下鉄「Subway in NY・Live」

地下鉄「Subway in NY・Live」

 

NYの地下鉄での演奏の記録。これまた凄まじいです。ジョン・ブッチャーホーコン・コーンスタがやっていたような、採石場や古い教会みたいな特殊な響きを持つ場所での演奏をやってくれたら、ぜひ生で体験してみたいです。